「ん〜…………」


          もう朝、かぁ…………






          『んじゃ、オヤスミ』

          『おやすみなさい、銀さん』










          「あ……」


          そっか、昨日銀さんがの依頼でうちに来たんだっけ……。






          「……朝ごはん作ったら、銀さんも起こさないとね」


          誰かと一緒に住んでるこの感じ、久しぶりだな……。




















僕の前に現れた君――第二話 あの日の思い出と今この時





























          『ー! もう起きないと遅刻するよ!』

          『もうちょっとー……』

          『ダメだよ、あたしご飯作れないもん!
           が作るんだから、もう起きないとさ』

          『そんくらい自分で作ってよォ…………』











          「…………えへへ」


          懐かしいな……

          あの頃はまだ、全然料理が出来なかったんだよね、あたし。
          今もそんなに上手くはないけれど、あの頃よりは慣れてきたかも。






          「やっぱり、誰かと一緒っていいよね……」


          一人じゃ、淋しいから――……




















          「…………あ〜あ、出ていきづらくなっちまった」


          いつもからしたら、自分で起きるなんて珍しいが……

          今日はいい匂いがしたために何となく目を覚ました、
          その先に彼女はいた。

          俺が一ヶ月間一緒に住むことになった、彼女の名前は
          一年前ほど前に妹は江戸に行き、は故郷に残された。



          その妹であるに依頼されたため、俺はここにやって来たんだ。











          『銀時、ちょっと頼まれてくれ』

          『あァ〜? 何だよ、一体』

          『……お姉に会ってほしい』

          『お姉?』



          それから、は今までのことを一通り話してくれた。

          数年前に自分たちの両親が亡くなったこと、
          それ以来姉妹で生計を立てていたこと、
          だけど経済状況が良くならなかったことや他にも色々、そして……


          が淋しがりだということ……。






          『は今でもお姉を一人で置いてきたこと、
           申し訳ないと思ってる』


          だけど後悔はしていない、とは続けた。






          『はここで……真選組の一員として働き、
           お金を稼がなくちゃならない』

          『ふーん』

          『でも、二年も音信不通だとさすがにお姉のことが心配だ。
           だから、銀時』

          『……?』

          『の代わりに、お姉の様子を見てきてくれ』






          『…………は?』






          『は江戸を離れられない。
           だから銀時、お前が行ってきてくれ』

          『ちょ、なんで俺が……』

          『これは“依頼”だ。ちゃんと報酬も出す』

          『けどよォ……』

          『頼む』



          初めは全然乗り気なんかじゃなかった、だが……



          の写真を見せられた瞬間、
          この子に会わなきゃならねェと思った。

          笑ってる写真だったんだ、けどどこか違和感があった。






          写真の中の子は、無理して笑っているように見えた……。





          それからの依頼を受けることを決めた。










          『一ヶ月くらいお姉と一緒に生活してやってくれ。
           そうすれば元気になるだろうから』



          の依頼は、の様子を見てくること、
          そしてと一ヶ月共に生活することだった。













          『よォ、君がちゃんだよな?』

          『えっ……?』



          実際に初めて会ったときは、すげーしっかりしてて
          淋しがり屋だなんて全然感じなかった。


          けど、やっぱりそうなんだなって、
          さっきの様子を見て実感したんだよな……。













          「……しゃーねェな、あと五分くらいしたら出てくかァ〜〜」



























          「…………あっ、そろそろ銀さんを起こした方がいいかな?」


          ご飯も冷めちゃうしね。







          「よォ〜、おはよーさん」

          「あっ、銀さん、ちょうど良かった!
           今、呼びに行こうとしてたところだったんだよ」

          「なんかいい匂いがしたから目ェ覚めたんだよ。
           そろそろメシの時間かァ〜?」

          「うん、そうだよ! ご飯にしよう」


          久しぶりに誰かと一緒の朝ごはんだ♪







          「なんか、機嫌いいじゃん、どーした?」

          「ひみつ♪」

          「あー! そうやって銀さんをのけ者にしようとしてんだな!
           それけっこう傷つくからやめなさい、!!」

          「あはは、銀さん、口調がどこかのお母さんみたい」


          でも面白いよね。







          「じゃ、いただきまーす!」

          「いただきまァ〜〜す」


          うーん、今日もあたしにしては、なかなか上手く出来たかも!







          「は料理できるんだな」

          「ううん、そんなことないよ。
           簡単なものしか作れないし」


          それに……






          「あたしはいつもに作ってもらってたしね……」


          の方が、料理は得意だったから……。














          「……」

          「……ねぇ、銀さんのこと聞いてもいい?」

          「…………まァ、スリーサイズ以外なら
           特別に答えてやってもいいぞォ〜」

          「あはは、そんなの聞かないってば」


          それから、銀さんに質問したりして、たくさんしゃべった。
          いつもならすぐに終わってしまう朝食が、いつもの倍かかった。




















           「そっかぁ、銀さんは三人で万事屋をやってるんだね」

           「まァな〜。けどアイツら、全然つかえねーよ」

           「そんなこと言わないの! でも新八くんと神楽ちゃんだっけ?
            二人に会ってみたいな〜」

           「言っとくけど、アイツらに会っても何も得られるものなんてねーよ。
            会ってガッカリするだけだからねコレ」


           だけど、一緒にいるってことはやっぱり信頼してるとか、
           きっとあるんだよね。いいなぁ、そういうの……。
 







           「…………あっ」

           「ん? どうした?」

           「うん、そろそろお買い物に行こうかと思って。
            お昼ご飯の材料も無いし、ついでに夕飯の材料も、って」

           「ふーん、じゃあ行くか」


           あ、一緒に来てくれるんだ……。












          「…………ありがとう、銀さん」

          「何のことだァ?」

          「ううん、何でもない。
           それより、午前中全部おしゃべりで潰しちゃってごめんね」


          久しぶりに誰かとゆっくりしゃべれる時間が取れたから、
          なんか色々しゃべっちゃった……。






          「気にすんなよ、今は俺もお前と一緒に住んでるんだしな。
           一緒に住んでる奴に気なんか遣ったって、疲れるだけだぜ」

          「うん……ありがと」

          「…………あァ。
           んじゃ、買い物行くかァ〜〜」

          「はーい!」


























          「おじさん、こんにちはー!」

          「おっ、ちゃん、こんち……
           …………ってオイ! ちゃん、隣の男は誰だい!?」

          「あ、この人は坂田銀時さんです」

          「どーもー、昨日からと一緒に住んでます」

          「
何ィ!? ちゃんと同棲!?」


          って、八百屋のおじさん、何か勘違いしてる……?







          「ち、違うんです、おじさん!
           実はが……」

          「……! ちゃんが……?」


          それから、おじさんには一通り説明させてもらった。
          おじさんも、なんとか理解してくれたみたい。











          「そっか……まァ、何にしろ良かったな、ちゃん。
           ちゃんもそれだけちゃんのこと気にかけてるんだよ」

          「……はい、そうですね」


          仲良くなった人はみんな、
          が夢を追いかけて江戸に行ったことを知っている。

          だから、おじさんもそう言ってくれたのだろう。







          「じゃ、今日はタマネギをサービスするよ!」

          「わぁ、ほんとですか? ありがとうございます!」


          タマネギは好きだから嬉しいな♪






         「じゃ、おじさん、また来ますね!」

         「はいよ〜、毎度!」


         今日は得しちゃったな♪







          「じゃ、銀さん! 次、行こっか」

          「……そうだな」


          それから魚屋さんやお肉屋さんにも行ったんだけど、
          行く先々で銀さんのこと説明したのは言うまでもない……。


          だけど、みんな“良かったね”って言ってくれるの。
          はここにはいないけど、あたしはそんなに淋しくないよ。










          「それに…………」


          今は銀さんもいるもの、ね。

















          To Be Continued...「第三話 君の本当の笑顔が見たいと思う