銀さんがやって来てから二週間が経った。
「うーん……」
今日はお仕事も何も無いし……
久しぶりに、ちょっと遠くに出かけようかな?
「銀さんに聞いてみよっと……」
今は、一人で勝手に決められないものね。
だけど……
そういうの……なんか嬉しいって、そう思うんだよね。
僕の前に現れた君――第三話 君の本当の笑顔が見たいと思う
「銀さん、おはよう!」
「ん〜……?」
あ、寝ぼけてる……ちょっと可愛いかも。
「銀さん、今日はちょっと遠くの街まで
出かけようと思うんだけどー……」
「遠く……?」
「うん……えっと、銀さんも行く?」
「…………」
……もしかしてまた寝ちゃった?
「…………じゃあ、行くかァ〜〜……」
「えっ、いいの?」
「が行くっつーのに俺が行かなかったらおかしいだろーが」
「でも……」
無理に行ってもらっても申し訳ないってゆーか……。
「もしかしてアレですか、ちゃんは銀さんと一緒じゃ嫌ですか」
「そ、そんなことないよ!
あたしは銀さんと一緒の方がいいもん……」
一人で出かけるより誰かと一緒の方が、絶対楽しいし……。
『ー! 明日は隣町まで出かけようよ』
『また? お姉も飽きないね……。
は家でゆっくりしたいよ』
『でも、気分転換にもなるしさ! お昼はおごってあげるから』
『…………仕方ないなァ』
のことも、よく連れ出して出かけてたな……。
「…………行くぞ、」
「え、あ、でも銀さんっ!」
「んー?」
「朝ごはんとか食べてから行こう?」
「…………。
…………そ、そーだな」
あはは、銀さんは意外にあわてん坊なのかも。
「電車で行くのか」
「うん! あたし、乗り物好きだからね。
大抵は電車かバスで移動するの」
お父さんとお母さんがいた頃に普通免許は取ったけど、
うちには車は無いからね……。
「銀さんも、ここまで電車で来たんでしょ?」
「まァな」
「江戸からじゃ結構遠かったよね……ご苦労さま」
「ホント、が言うより長かったぜオイ」
でも、それでもここまで来てくれたんだよね……。
「銀さん……ほんとに、ここまで来てくれてありがとう」
「……」
「あたし……銀さんが来てくれて良かった。
毎日楽しいし…………」
今は、あんまり淋しくないから……。
「…………ありがとう」
「……あァ、ま、依頼もあったしな」
「そうだね」
さ、しんみりするのはここまでにして、さっそく出かけよう!
「銀さんは、普段も電車を使ってるの?」
「いーや、俺はだいたい原チャリだな」
「えっ、すごい!」
「いや、ちゃん……原チャリはそこまですごくねーぞ?」
そうかな? あたしにとってはすごいんだけど……。
(なんか原チャリって運転難しいし……。)
「あ、でも、原チャリってことはヘルメット?」
「めんどくさいけど付けないと捕まっちまうしなァ……に」
「あはは」
って、そーゆーの目ざとく見つけるもんね。
「……でも、ヘルメットしちゃったら勿体無いね」
「何が?」
「銀さんのふわふわの髪、
風に揺れてたら気持ち良さそうなのに……」
ヘルメットしてたら、それも叶わないよねー……。
「…………」
「えっ、何? あたし何か悪いこと言った……?」
「いや……ちょっと、な」
「……?」
「……俺、天パー気にしてんだよなァ〜〜」
ええっ!?
「そ、そうだったの!? ごめんなさい!」
「いや、いいって。お前は知らなかったし」
「で、でも……ごめん、なさい…………」
あたしったら、最悪だ…………
「ごめんなさい、
すごく似合ってて格好よかったから、つい…………」
「……!」
銀さん、傷ついちゃったよね……。
(あーもう、あたしのバカ!!)
「…………いいからもう気にすんな」
「だけど……!」
「俺がいいっつたらいいんだよ」
「……!」
銀さん……頭なでてくれた…………。
「そーいや、お前も天パーなんだな」
「う、うん……あたしのは全然似合ってないし、
ヘアースタイルも限られちゃうしで散々だよ」
それに比べてはストレートだったよねぇ〜……
羨ましいなぁ、もう!
「あっ、でも、それだったら銀さんとお揃いだね!」
「おー、そういやそうだなコレ。光栄に思えよォ、」
「うん、すごく嬉しい!」
「……!」
あれ? 銀さんが固まっちゃった?
「銀さん? どうしたの?」
「あ、あァ……別に何でもねーって」
「そうなの?」
「おう」
よく解んないけど……
本人がそう言うなら、大丈夫……なのかな?
「ったくよォ〜……」
の奴、爆弾を投下すんのが好きだよなァ〜〜……
(本人に自覚は全く無いみてーだけど……。)
『解った、よろしくね、銀さん!』
初めて会った日にも、は笑顔を見せた。
あの写真とは違う、本当の笑顔を。
何故かその笑顔にはドキッとさせられるが、
その笑顔をまた見たいって思っちまうんだよな……
俺ってこんなキャラだったっけか?
「いや、ぜってー違うだろ……」
けど、淋しそうなを見るたびになんとかしてやりたいと思う。
俺に何が出来るかなんて解らねェが、何かしら出来るはずだ。
のために、何か…………。
『うん、すごく嬉しい!』
「…………」
お前が俺に笑顔を向けてくれることが、
妙に嬉しいんだよ…………。
『一ヶ月くらいお姉と一緒に生活してやってくれ。
そうすれば元気になるだろうから』
――の依頼は、一ヶ月間と共に生活すること。
すでに半分の二週間が過ぎた。
残り半分の二週間が過ぎれば、俺は江戸に帰る…………
「なんだってんだよ…………」
なんで帰りたくないって思ってんだよ、俺は…………
To Be Continued...「第四話 君の持っているもの」