「これくらいでいいかな?」

          「さすがに足りるんじゃねェの?」


          夕食の材料を買うために、
          あたしと銀さんは近くのスーパーまで来ていた。



















僕らが過ごす日々――第一話 くの一との遭遇



































          神楽ちゃんがたくさん食べる子だから、
          材料も多めに買うことにしたんだけど……

          さすがに、これだけあれば充分だよね。







          「んじゃ、ぼちぼち帰るかァ〜」

          「そうだね」


          それにしても、こんなに大量に買い込むなんて
          初めてかもしれないな……。






          「……

          「ん?」

          「重くないか?」

          「あ……うん、平気だよ。
           あたしの方には、軽いものしか入ってないし」


          銀さんって意外と……って言ったら失礼かもしれないけど、
          けっこう気遣い屋さんだよね。

          スーパーから出るときも、
          さり気なく重い方の袋を持ってくれたし……







          「やっぱり優しい……」

          「ん? 何だって?」

          「あ、ううん、何でもないよ!」


          さすがに面と向かって
          “優しいよね”なんて言えないから……

          聞かれてなくて良かった。















          「ちょっと、あなた!」

          「え……?」


          もしかして、あたし……?





          「そう、あなたのことよ」

          「は、はぁ……
           あの、あなたは?」

          「私は猿飛あやめ。さっちゃんと呼ばれているわ」

          「さっちゃん、ですか……
           えーと、あたしはと言います」


          よく解んないけど、とりあえず自己紹介しとこう。






          「そう、って言うのね」

          「は、はい」

          「、あなた銀さんとどういう関係なの!?」

          「ど、どういう関係って……」


          急にそんなこと言われても……






          「まず、銀さんと初めて会ったのは一ヶ月ちょっと前で……」


          銀さんは、の依頼であたしの故郷までやってきて……






          「それから一ヶ月間は、あたしの故郷で一緒に暮らして、」

          「一緒に暮らしたって……何よそれ同棲!?

          「いや、そうじゃなくて」

          「もしかして……今も一緒に住んでるの!?」

          「え、えぇ、まぁ、神楽ちゃんと三人で暮ら
「ひどいわ!!」


          って、あたしの話、聞いてないよね?






          「あ、あの、さっちゃん……」

          「ひどいわ、銀さん! 私というものがありながら!!

          「ええっ!」


          もしかして、さっちゃんと銀さんって……!





          「しかも何よその荷物!

           いかにも“これから一緒にご飯作ります”みたいな
           そんな感じじゃないのよォ!!」

          「えっと、これは、」

          「何よ何よ! 銀さんのバカ!!


          いや、あの、あなたが引きとめたから
          銀さん先に行っちゃったみたいでもういないんですが……。





          「そうやって私が悔しがってるのを見てるのね!
           いいわ! 乗ってやろうじゃない!!」

          「あ、あの……」


          どうしよう、この状況……?




















          「オーイ、何してんだテメーは」

          「あっ、銀さ「銀さん!!」


          良かった、戻ってきてくれたんだ……。






          「ったくよォ、いつの間にか隣にがいねーと思って
           必死に探したら変なのに絡まれてるしよォ」

          「銀さん! 会いたかったわ!!」


          さっちゃんはそう言って
          銀さんに抱きつこうとしたけど……



          
ドカッ







          「ごふっ!!」


          銀さんは、そんなさっちゃんを蹴飛ばしちゃって……

          …………って、いいのかなぁ?






          「ぎ、銀さん……さっちゃん、大丈夫なの?」

          「あァ、心配いらねーよアイツの生命力は並じゃねーから」

          「そ、そうなんだ」


          でも、全く動かないんだけど……。






          「それより、さっさと帰るぞ」

          「え、あ、うん」


          でも、さっちゃんが起きたらまた大変そうだし……
          こうするしかない、よね?















          「あ、あの、銀さん?」

          「ん〜?」

          「銀さんって……さっちゃんと付き合ってるの?」


          
ガン






          「ぎ、銀さん、大丈夫!?」


          どうして電信柱に突撃(?)しちゃったの……!?






          「…………。
           (なんでよりによってに誤解されてんだよ
            アイツ覚えてろよコノヤロォォ!!)」

          「……?」


          どうしたんだろう……?





          「ちゃん、よく聴きなサイ」

          「うん」

          「銀さん別にアイツと付き合ってねーから」


          あ、そうなんだ。






          「というより、付きまとわれてるって感じだな」

          「えっ……」

          「まァ、そーゆーことだ。変な遠慮すんじゃねーぞ?」

          「……うんっ」


          良かった……
          じゃあ、あたしが万事屋に住んでても大丈夫だよね?















          「それに俺、好きな奴いるし」

          「えっ! 誰!?」

          「…………ごめんなんでそんなに食いついたの?


          だって楽しいもん!






          「…………。
           (コイツはアレだな、
            人のことは鋭いのに、自分のことには鈍い人間(タイプ)だな……)」

          「ねぇねぇ、誰なの!? 教えてよ、銀さん!」

          「あ〜……」


          銀さんは言いにくそうに一呼吸置いて答えた。






          「俺の好きな子はだなァ〜」

          「うんうん!」

          「今、俺の目の前で俺の好きな奴を聞き出そうと
           一生懸命になってる女の子」

          「うんう…… …………ん?」


          目の前にいる、
          銀さんの好きな人を聞き出そうとしてる……?


          それって…………
















          「…………!!」

          「ハイ、正解〜」


          それだけ言って、銀さんは歩き出してしまった。






          「ちょ、ちょっと銀さん、待って!!」

          「やだね〜」

          「やだじゃなくて!
           今の、ほんと……なの?」


           違うよね?






          「冗談だよね!? ねぇ、銀さん! そうだよね!?」

          「さァ、どうだろうなァ〜〜」

          「……!!」


          そう言った銀さんはすごく意地悪そうな笑みを浮かべ、
          そのまま歩いていってしまった。















          「はぁ…………」


          やっぱり、からかわれたんだろうなぁ……。






          「全くもう……」




















          「あー……」


          なんか勢いで言っちまったよ、どうしよう……






          「元はと言えば、あのM女のせいで……」


          には誤解されそうになったし、散々だな……。















          「はぁ……銀さんは仕方ないなぁ…………」




          「はぁ……は鈍いなァ…………」


          同時にため息をついていなことなど、
          俺たちは互いに知らぬまま帰路についた。




















          To Be Continued...「第二話 いつかあなたの助けに