『押収した品については、専門家に分析してもらうことになる。
結果が出たらまた連絡するからな』
土方さんがそう言ったところで、昨日の調査は終了した。
なんだか妙に疲れてしまったあたしは、
今日は万事屋のベランダで日なたぼっこしていた。
僕らが過ごす日々――第五話 ただ一つの護りたいもの
「はぁ……」
『ただお前に会うために、潜り込んでいただけのこと』
「高杉……晋助…………」
晋助は、会えば会うほどよく解らない人物だ。
どうして、あたしに協力してくれるんだろう……。
『真意、か。それは……』
それは、何…………?
「…………あれ?」
あそこ歩いてるのって、桂さんとエリザベスじゃ……
『しかしテロだなんて、ヅラになった気分だぜ』
そういえば、桂さんは(おそらく)晋助と一緒に
攘夷戦争に参加してたんだよね……
「聞けば何か解るかな……」
とにかく、急いで桂さんとエリザベスを追わなきゃ!
「桂さんっ!」
「……?」
良かった、追いつけた……。
「あ、あの、桂さん」
「どうした?」
「その……ちょっと、聞きたいことがあるんです」
桂さんなら、銀さんよりは聞きやすいし……。
「聞きたいこととは?」
「その……高杉晋助のことで」
「高杉だと……?」
あたしのその言葉に、桂さんの顔色が変わった。
「……、少し場所を変えよう」
「は、はい」
「それで……高杉のことで聞きたいんだったな」
「はい」
晋助の真意が知りたい。
でも、その前に“高杉晋助”という人間をよく知る必要があると思う。
「では、お前の質問に答える前に、俺も一つ聞いても良いか?」
「え、あ、はい」
「お前は、奴と……高杉と会ったことがあるのか?」
「…………」
『よォ……スパイとは、ご苦労なこったな』
「……はい、会ったことはあります」
「そうか……」
「土方さんと――真選組の方に頼まれて調査していたとき、
偶然通りかかった晋助と会いました」
そして、昨日……会うのは二度目だった。
「……そうか。先に質問してしまってすまない。
それで、お前は何が知りたいんだ?」
「はい……
“高杉晋助”がどういう人間なのかを知りたくて」
「一体、何故……」
『真意、か。それは……』
「……晋助の、真意を知るためです」
「…………なるほどな。
(曇りのない目だ……
どうやら、生半可な気持ちで言っている訳ではないらしい。)」
…………。
「そうだな、俺の答えられることならば話そう」
「……! ほんとですか!?」
「あァ」
それから桂さんは、あたしが質問した晋助のことについて、
いろいろと話してくれた。
「……ありがとうございました、桂さん」
「いや……あまり参考になる話しが出来なくてすまぬ」
「いえ、すごく助かりました!
なんだか、銀さんには聞きにくかったので……」
「……そうか、そうだな」
やっぱり、みんな攘夷戦争で一緒に戦ってたんだ……。
「では、俺はこれで失礼する」
「はい、ほんとにありがとうございました!
エリザベスも、時間を割いちゃってごめんね」
『大丈夫』
「…………」
『桂さん?』
「エリザベス……高杉は、何を考えているのだろうな」
『……?』
『……晋助の、真意を知るためです』
「詳しくは話してくれなかったが、おそらくは
奴と単にすれ違っただけではないのだろう』
そうでなければ、真意を知りたいなどと思うはずもあるまい。
『何か企んでいるとか』
「解らん……だが、用心しておいて損は無いだろう」
『……そうですね』
『俺ァただ壊すだけだ。この腐った世界を』
高杉……
お前はいったい何を考えている……?
『あたしのことは“”でいいですよ』
……
会ってから間もないが、なんだか妹のような存在だ。
何か困ったことがあれば、助けてやりたいとも思う。
「高杉……」
お前がに危害を加えるのならば、俺はそれを阻止する。
「おそらく、銀時も同じ考えだろう」
奴がどういった経緯で、どういった想いで
と共にいるのかは解らん。
だが、それ相応の理由があるのだろうな……。
「……エリザベス」
『何ですか?』
「には優しく接してやってくれ」
『……はい』
『あ、坂本さんも一緒に戦っていたっていうのは、
ちょっとだけ銀さんに聞きました』
まさか、が坂本とも会っていたとはな……。
「…………」
を中心に、俺たちが引き寄せられている……?
「…………考えすぎか」
少し神経質になっているのかもしれんな……。
「はぁ…………」
桂さんから話を聴けたのは良かったけど、
なんか考えすぎてさらに疲れちゃったな……。
「眠くなってきちゃったし……」
でも、ソファで寝るのはさすがに……。
「せめて、部屋で……」
だけど、部屋にたどり着くことなく、
あたしはそこで意識を手放してしまったのだった。
「ただいまァ〜……
…………ん?」
仕事から帰ってきた俺の目に、
ソファで横たわる誰かの姿が入ってきた。
「ん……すぅ……すぅ…………」
新八と神楽は、今の今まで一緒に依頼をこなしてきたんだ。
そこで横たわっているのは、もちろんしかいねェ。
「ったく、なんでこんなトコで寝てんだよ……」
かなり無防備だし……。
「これじゃあ襲われても文句言えねーぞ、コノヤロー」
…………ま、そんなつもりは全く無ェけど。
俺は、の本当の笑顔が見たい。
そのためなら、相手が誰だろうと容赦しねェ……
そうだ、誰だろうと……。
「……はァ〜。
とりあえず、このお姫さんを部屋に運びますかね」
もうすぐ、スーパーに寄ってから帰るっつってた
新八と神楽も来る頃だろうからな……
「そしたら、も起きちまうかもしれねーし、」
昨日から様子も変だったし……。
「メシができたら起こしてやっから」
それまでゆっくり休んでろよ、。
そうして布団に寝かせてやると、
俺はを起こさないようにそっと部屋を出た。
To Be Continued...「第六話 猫のように自由な相棒」