「ありがとうございましたァ〜」
「ふぅ」
江戸に来てからそんなに経ってないとは言え、
一通り生活に必要なお店の場所は覚えてきたよね。
「スーパー、ドラッグストア、ホームセンター……」
他にも色々と覚えられたし、いいことだよね。
僕らが過ごす日々――第六話 猫のように自由な相棒
「……さてと、」
欲しいものも全部買えたし、そろそろ帰ろうかな。
「ん?」
屋根を伝って移動してるアレって……もしかして忍者?
すごい、ほんとにいるんだ……!
「……ちょっと、ついていっちゃおう」
面白そうだしね。
「……とは言ったものの、やっぱり難しかったかな」
忍者って、やっぱり足が速いんだろうし……。
「いいや、ここまで俺について来れれば上出来だぜ」
「……!」
どこ?
「よォ、初めて見る顔だな」
「……!」
いつの間に背後に……。
「テメー、何モンだ? 何故俺をつけていた」
「そ、それは……」
どうしよう、
まさか面白そうだったからなんて言えないし……!
えーと、えーと……
…………そうだ!
「あ、あのっ!」
「……?」
「ぜひ、あなたの力を貸してほしくて」
「俺の力?」
すごく頭のキレそうな人だな……
うまくごまかせるといいんだけど。
「あたしは、万事屋をやってるの」
「ほう」
「それで、最近よく調査を頼まれるんだ」
ほんとは“よく”って言うほど頼まれてないけどね……。
「それと俺の力と、どう関係がある?」
「う、うん……
その調査をするとき、あなたに協力してほしくて」
「協力?」
「そうだよ」
今のところは、ちゃんと聴いてくれてる……。
「後を追ってきたあたしに、いち早く気付いていたようだし……
あなたの実力は相当と見える」
「フン……なるほどな。
だが、俺がお前と組んで何を得られる?」
「えっ……」
そ、そこまで考えてなかった……!
「え、えっと、それは……」
「…………」
「た、たぶん何か得られるよ!」
“たぶん”って何言ってんの、あたし……!?
「……。
(フッ、さっきまでの冷静さはどこに行ったのやら……
だがそこも面白いな…………)」
どうしよう、なんかやばそう……?
「…………いいだろう」
「えっ?」
「お前と組むぜ」
えっ!
「ほんと!?」
「あァ」
「ほんとにいいの!?」
「そう言ってんだろ。自分から頼んできたのに変な奴だな」
それはそうだけど……
「ほんとに引き受けてくれるとは、思ってなくて……」
「……。(つくづく面白い奴だな。)
俺は服部全蔵だ、よろしく頼むぜ」
「うん、よろしく!」
なんだか成り行きで決まっちゃったけど、
心強いパートナーができたね。
「それじゃ、今日のところはこれで失礼するぜ」
「あ、ちょ、ちょっと待って! ケータイとか持ってる?」
「持ってるが、それがどうした」
「番号教えて! 仕事するとき、連絡が取れるように」
「なるほどな……
ほら、これが番号だ。さっさと登録してくれ」
そう言って、全蔵は自分のケータイを差し出した。
「……よし、出来た!」
「じゃあ、仕事のときは声かけてくれよ」
「うん!」
「わぁ……」
もういなくなってる……。
「でも、なんか得しちゃった気がする」
ちょっとした好奇心からついていっただけなのに、
全蔵っていうパートナーを見つけたし……
「引き受ける仕事の幅も、広がりそうだね!」
――あれから数日後、あたしはとある豪邸の前まで来ていた。
事の発端は、昨日の昼下がりまで遡る。
『あのお邸に?』
『はい……家宝を騙し取られてしまったんです』
依頼主は、もともと銀さんに依頼しに来ていた。
だけど、あたしはとある事を試してみたくて
あたしにやらせてって銀さんにお願いしたの。
銀さんと一緒に一通りの話を聴いて、
あたしはすぐ依頼主と一緒にお邸を見に行った。
『けっこう大きなお邸ですね……』
『えェ……
ですが、そのために色々と汚いこともやっているという噂です』
依頼主のほかにも、宝物を騙し取られた人がいるらしい。
まぁ、とにかく、依頼主の家宝を取り戻すことが第一……
…………だけど。
「その“汚いこと”っていうのが何か調べるのも
けっこう面白そうだよね」
うまくいけば、真選組のみんなが逮捕してくれるだろうし。
「よし、」
「それじゃあ、行くとするか」
「うん!」
お邸に忍び込もうとしていたあたしの隣には、
「よろしくね、全蔵」
「任せとけよ」
数日前に、仕事への協力を了承してくれた全蔵の姿があった。
「だが一つ言っておくぜ、」
「何?」
「俺ァ忍だが盗人じゃあない」
あ、そのことか……。
「まぁ、ただ家宝を取り戻すだけなら
表面上は“盗人”になっちゃうかもしれないけど、」
「……?」
「ついでに奴らの鼻を明かすなんて、盗人じゃ無理でしょ?」
「……! ……ハハ、違いねェ」
さて、作戦会議もバッチリ終わってるし……
「ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう♪」
「ヘマすんなよ、」
「そっちこそ」
それが、あたしと全蔵がコンビを組んだ初めての仕事だった。
To Be Continued...「第七話 君は笑顔が一番だから」