勝真さんのお邸に住むようになって、早くも(?)一週間。
          扇を買ってもらった後、はしゃいでそのまま帰ってしまったあたし。





          「彰紋くんに、図書寮のこと頼むの忘れてたし……
          馬鹿だ……」


          そんなわけで、その日のうちに文を出してみた。

          もしかして本人の手元に行く前に返されちゃうかなー
          とか思ったんだけど、無事に届いたみたい。





          「こうしてお返事も来てるし、ね」


          なんでも、忙しくてお返事が遅れちゃったみたいだよ。
          まぁ、東宮様だし忙しいのは当たり前なのかな……?





          「でもって……」


          なんと、図書寮に入れてもらえることになったのだ!!





          「やったね」


          これで、牡丹の姫についても調べられるよ。












          「様、おはようございます」

          「あ、おはようございます!」


          一人で色々と考え込んでたら、女房さんに話しかけられた。

          この女房さんは勝真さんのお邸の人で、
          あたしのお世話をしてくれてる人だ。

          ……なんだか、こんな小娘の世話だなんて申し訳ないけれど。






          「さてと! 今日も扇を持ってお出掛けしよう!」
 
          「まぁ、様。そちらの素敵な扇は……?」
 
          「こないだ勝真さんが買ってくれたんです!」
 
          「そうでしたの……」


          女房さんは、心底驚いているようだった。
          ……なんでだろ?





          「(勝真様が女性に贈り物など……初めてではないかしら?
            様は、勝真様にとってとても大切な方になりそうね……)」


          何か考えてる女房さんの心の中は、あたしに分かるはずもなく。





          「じゃあ、行ってきますね」

          「本日はどちらへ?」

          「図書寮です。
           あきふ……東宮様のご厚意で、調べ物をさせて頂けることになって」

          「左様でございますか……行ってらっしゃいませ」

          「はい!」


          いざ、図書寮へー!!
























          「彰紋くん、おはよう!」

          「おはようございます、さん」

          「我が侭を言っちゃってごめんね」

          「いいえ、とんでもないですよ」


          彰紋くん……やっぱり笑顔が可愛いな。
          癒される……。






          「僕も……さんにお聞きしたいことがあったので」

          「え、何?」

          「あなたは……“牡丹の姫”なのですか?」

          「……!」


          あ、あれ?
          彰紋くんに“牡丹の姫”のこと、言ったっけ……?





          「えーと……彰紋くんは、なんでそう思ったのかな?」

          「す、すみません……ぶしつけでしたね」

          「ううん、そんなことはないよ」


          ただ、ちょっとビックリしただけだね。





          「実は……
           先日、僕の手の甲に玉みたいなものが現れて」

          「うん」


          龍の宝玉だね……
          じゃあ、彰紋くんが八葉だって発覚したのかな?





          「龍神の神子を名乗る花梨さんが……
          僕が八葉だとおっしゃるんです」

          「うん」

          「それで、あなたのことも説明して下さいました。
           あなたは龍神の神子以上にその存在が曖昧な“牡丹の姫”であると」

          「……うん」


          それから彰紋くんは、イサトくんと花梨ちゃんと共に
          朱雀を開放したことを話してくれた。
          (でも、そのとき一緒にいた泉水も含め、
           なんだか一騒動あったみたいだけど……)

          そして、自分も以前、本で読んだ“牡丹の姫”について
          思っていることを話してくれた。











    


          「つまり、あたしが本当に“牡丹の姫”であるか聞くつもりで
           今日ここに入れてくれたんだね?」

          「はい……
           なんだか騙してしまったようで申し訳ないです」

          「ううん、それはいいよ」


          それよりも……





          「彰紋くんは、八葉だって自覚しているの?」

          「それは……」

          「……まだ信じられないんだね?」

          「はい………」


          まぁ、仕方がないか……。
          今、この世界でも神子は院のおそばにいる……

           確か……平千歳…………



          ん?“平”……?





          「うわー、そういえばそーゆー設定だっけか……」


          勝真さんの妹じゃん……。












          「さん?どうかされましたか……?」

          「あ、ううん! 何でもないよ」


          まぁ、のちのち戦うことになるかもだけど……
          どうにかなるよね。うん!





          「えーと、彰紋くんの質問に答えるけどね、」

          「はい」

          「君の言う通り、あたしは“牡丹の姫”だよ」

          「本当だったんですか……!」


          意外だったかな?





          「うん。龍神にそう言われて、こっちに来たし。
           あ、あたしも異世界から来たんだよ。

           花梨ちゃんのこと、少しは聞いたでしょ?
           異世界から来てることとか……」

          「はい、多少は……」

          「まだ、具体的に何をすればいいのか解らないけど……
           頑張って花梨ちゃんの手伝いをするつもりだよ」


          とりあえず、武器がほしいかな?
          怨霊と戦えないと危ないしね。











          「……さんは強い方ですね」

          「そうでもないよ」

          「ですが……
           突然言い渡された役目を、懸命に果たそうとしている。
           疑うこともせずに、それを信じて……」


          あたしは、自分のしたいことをしているだけだから。





          「そんな、格好いいことしてないよ」

          「いいえ、僕は……とても格好いいと思います」

          「そ、そうかな?」

          「はい!」


          うわー、そんなこと言われたら、お姉さん照れちゃうよ!!





          「ま、まぁ、彰紋くんに八葉だっていう自覚が出来て、
           花梨ちゃんたちを信じられるようになるまで
           ゆっくりやって行けばいいと思うよ?」

          「は、はい」
 
          「よし!
          じゃあ、ここの資料で調べ物してもいいかな?」
 
          「は、はい、どうぞ!」


          それが目的だったんだしね〜。
          調べないと損だよ!





          「実は、“牡丹の姫”について調べに来たんだよ」

          「……! そうだったんですか……」

          「うん」


          なかなかいい図書館みたいだしさ。





          「……僕も、お手伝いします」

          「え、いいの?」

          「はい! 僕、色々とためになるお言葉をくださったさんの
           お手伝いがしたいんです」

          「そ、そっか……ありがとう、彰紋くん!」


          それから一緒に“牡丹の姫”について調べたけど、
          結局あたしが知ってる以上のことは解らなかった。

          けど、彰紋くんと八葉について話せたのは良かったと思う。
          なかなか有意義な一日だったかな?





この調子で八葉がみんな見つかればいいね!