「、ちょっといいか?」
「なんですか、勝真さん」
朝ごはんも食べ終え今日の予定を考えていると、
部屋に勝真さんが現れた。
「イサトがお前に会いたいって、来てるんだよ」
「え、イサトくんが?」
何の用だろう……?
…………ま、会えば解るよね。うん。
「勝真さん、イサトくんのところまで連れてってください」
「……で、さっきから黙ってちゃ解んないんですけど?」
「…………」
あれから勝真さんに連れられてイサトくんと会ったんだけど、
なんであたしに会いに来たのか言わないんだよね〜。
“会えば解るよね”とか思った過去の自分に、
それは間違いだと教えてあげたいよ。
「イサトく〜ん? あたし、もう帰るよ〜〜?」
「ま、待てよ!」
「……解った、待ってるから話したくなったら話してね」
「…………悪りぃ、……」
まぁ、この年頃は色々と難しいからね。
…………って、なんかあたし年寄りみたいだな……
まだ若いのに……。
「まぁ、それは置いといて。
イサトくん、向こうの方に行ってみない?」
「え、あ、おい、!!」
あたしは、イサトくんの制止も軽く無視して、そのまま走った。
「すごーい! 八角形だ〜」
「法勝寺っつーんだよ」
「へぇ〜!」
法勝寺か〜、なるほどね!
どうやら、院の力が強く影響してる場所みたいだね。
「どのくらいの高さがあるのかな?」
この時代の建築って、どんな感じなんだろうね?
「……っ!」
なんか、急に嫌な感じが……!
「どうした、!?」
「イサトくん……何か変な感じがしない?」
「……! この気配……怨霊だ!」
「マジですか!!」
どうすんだよ、まだあたし武器とか持ってないんだけど!?
「ちっ……俺が何とかするから、お前は下がってろ!」
「そ、そんな……イサトくんだけじゃ危ないよ!!」
「俺を見くびんなよ、!!」
いや、でも一人じゃ危ないって……!
「どうしよう、何か武器になる物は……」
ほら、ちょうどいい棒とかさ……
ったく、何か転がってないの!?
「! 危ねぇ……!!」
「え……!?」
怨霊があたしに向かってきていた。
――このままじゃまずい、と思ったそのとき。
どこからか強い光が放たれた。
「扇が、光ってる……?」
光っていたのは、勝真さんに買ってもらったあたしの扇……。
「…………一か八か」
あたしの勘が正しければ……!!
ガキィィン……!!
「、お前……!」
……そう。
あたしは光りだした扇を手に取り、怨霊の攻撃を防いだのだ。
「よ、良かった、防げて……」
「あんま無茶すんなよ、!」
「ご、ごめんって」
でも、あのままじゃ危なかったしさ……。
「とりあえず、さっさとこの怨霊を倒しちゃおうよ!
まだイサトくんの話も聴いてないし、
こんな所でもたもたしてる場合じゃないでしょ?」
そうそう、そうだったよ!
怨霊に手こずってる場合じゃなかった!!
「わ、わかった……けど、ホントにあんま無茶すんなよ!」
「了解!」
わー! 扇が武器って、確か遙か3の朔ちゃんだよね!?
すげー! 格好いいーー!!
……なんて、感動してるうちに怨霊を倒していた。
もちろん、あたしも戦ったよ!!
「いや〜、無傷で良かったね、イサトくん」
「ホントだぜ……
お前も無茶するなって言ったのにするし」
「正当防衛だってば。
ま、でもこれで扇で戦えることが解ったし、
自分の身くらいは守れそうだね?」
自分の身くらいは自分で守りたいよなぁ、いくらなんでも。
「……なぁ」
「ん?」
「俺……八葉ってのに選ばれたらしいんだ」
「……!」
そ、そっか……
イサトくん、院側の子だもんね。
花梨ちゃんの話によると、院側の八葉はすぐ見つかったって言うし……。
それに、こないだ彰紋くんが朱雀解放の話してくれたとき
イサトくんのことも言っていたし……
その時点で、イサトくんが八葉って発覚してたのは確実だったよね。
「……それで、イサトくんは何が不服なの?」
「……。 不服っつーか……
アイツが、花梨が本当に神子なのか解らなくて混乱してるんだ」
なるほどね……。
「それに、帝側の……
特に、貴族と協力するなんて出来ない……」
「……彰紋くんとか?」
「……!
アイツが八葉だって、知ってたのか……?」
「うん……こないだ聞いたの」
「そっか……」
イサトくんは貴族が嫌いみたいだね……
(理由とか、後で勝真さんにでも聞いてみようか?)
「……みんなはさ、
院のもとにいるお方を龍神の神子だと思ってるんだよね」
「ああ、俺もそう思ってた、けど……」
それが本当なのかも解らなくなってきた……ってとこかな?
「……イサトくんは、イサトくんが信じたいと思うものを
信じていけばいいんじゃないかな」
「俺の……信じたいと思うもの?」
「そう。確かに、色々な事があって混乱しちゃうよね。
突然嫌いな人と協力しろって言われても、戸惑ってしまうと思う。
でも、どんなときでも、自分の信じるものを忘れちゃ駄目だよ」
信じるものは、そんなにいくつも無くていいの。
一つだけだって、いいんだよ。
そして忘れないで。その、自分の信じているものを。
いつも信じていて。
それは、きっと、間違いじゃないから……。
少なくとも、あなたにとっては。
「……解った」
「え?」
「俺は……俺の信じたいと思うものを、信じることにする」
イサトくん……
「龍神の神子とか、八葉とか、アイツと協力するとか、
本当はちゃんと考えないといけないんだと思う」
「……うん」
「でも、今はあんまり深く考えないで……
ひとつだけ信じて、やっていくことにする」
「……そうだね、それでいいと思う」
器用な人っているけどさ、反対に不器用な人だっているじゃない?
だから、不器用な人はひとつずつやればいいと、あたしは思うよ。
「お前も……龍神の神子を助ける役目があるんだろ?」
「……!
知ってたのんだ、牡丹の姫のこと……」
「花梨に聞いた」
そっか……。
「解らないことだらけだけど……
俺のこと気遣ってくれたお前や花梨のことを、まずは信じることにする」
「ホント?」
「あ、あぁ……
だ、だから、これからよろしくな!!」
「うん、改めてよろしくね!!」
良かった、イサトくん、元気になったみたい。
「けど本当に……
帝側の奴と協力できるかは、解んねぇけど……」
「あ、でもあたし、一応帝側っぽいよ?」
「お前は貴族でもないし、
勝真んちに居候してるだけだから帝側とも言えねぇよ」
「えー、そうかな〜?」
まぁ、いっか〜。
どっちかだと思われても色々と大変になるだけだしね。
「……俺が話したかったことは、もう話した。
暗くなってきたし、帰ろうぜ!」
「うん、そうだね!」
よく考えて、君の信じる道を進んでいってね。
……あと、できれば彰紋くんとも仲良くなってほしいな!
「……あ、さん!!」
「花梨ちゃんに泉水!? どうしたの、こんなところ(?)で」
勝真さんの館に入る寸前で、花梨ちゃん&泉水と遭遇した。
「聴いてください! 今日、また八葉を見つけたんですよ!」
「えー、良かったじゃん! なんていう人?」
「安倍泰継さんと言って、陰陽師の方です!」
あー、安倍家のね! うんうん、知ってる知ってる!!
「安倍家は優秀だからね。
きっと、その泰継殿も協力してくれたらすごいことになるよ」
「じゃあ、頑張って認めてもらわなきゃ!」
そ、そっか……
遙か2って神子に対する態度が(初めは)ひどいらしいよね……。
(花梨ちゃんは一生懸命なのにね!)
「うん、頑張ろう花梨ちゃん!
あたしも牡丹の姫として頑張る!!」
「はい、さん!!」
「じゃあ、また後でね」
「はい!」
「泉水も、お疲れさま〜」
「は、はいっ」
いい調子で八葉も集まってるみたいだな……。
彰紋くん&イサトくんのことと、花梨ちゃんがこの間くれた文から考えると、
院側の頼忠さん、イサトくん、幸鷹さんに、泉水、
帝側の彰紋くん、翡翠さんに泰継さん……
……あれ?
あと一人って普通に勝真さんなんじゃ…………?
……ま、いっか。