「お久しぶりですね、勝真さん」
「お前……どうして……」
あたしの突然の登場に、
勝真さんは今までにないくらい驚いているらしく……
それ以上は何も言えなくなってしまっていて、
その様子が少しおかしかった。
「笑っている場合か!
それよりお前、何故ここに居るんだ」
「『向こうでどうしてもやりたいこと』が終わったので、
こうして戻ってきたんですよ」
そう言うと、「どうして戻ってこれたんだ」と
言わんばかりの顔をされる。
さすがにあたしもそれは予想していたから、
一つずつ説明していくことにした。
「……あたしも、まだよくは解っていないんですけどね。
あたしに加護を与えてくれているのは、龍神じゃないんです」
「そう、なのか?」
「はい」
まず、あたしに加護を与えてくれていたのは
龍神ではなくあの――女のひとだということ。
そしてその人が、あたしの願いを一つ叶えてくれると
言ってくれたことを話していく。
「それであたしは、そのひとにお願いをしました」
この世界に来るきっかけをくれた彼女にお礼を言うため、
いったん元の世界へ返してもらうこと、
そして再びこの世界に戻してもらうこと、
そのとき元の世界でのあたしの存在を全て消し去ること。
「一つ、と言っておきながら、
実はいくつもお願いしていることになるんですが」
だから、最初から戻ってくるつもりではいたけれど、
本当に戻ってこれるかちょっと心配で。
「だからあのとき、神泉苑で……
余計なことは言わずに、元の世界へ帰ったんです」
勝真さんや、花梨ちゃんたちに心配かけただろうけど……
もし再び戻ってこれなかったときのために、
まだ黙っていたほうがいいかと思って。
「そう、だったのか……」
「はい」
でも、良かった。
「勝真さんがあたしを信じてくれてたから、
こうして戻ってくることが出来ました」
「それは……俺の力じゃない、
お前に加護を与えているやつの力だろう」
「いいえ、勝真さんの力ですよ」
ここに戻って来る前……
あのひとの声が、微かに聞こえた。
姫……
申し訳ありませんが、私の力が少し足りないようです
あなたが大切に想い、
あなたを大切に想う者の信じる心を……
少しだけ、お借りしますよ――……
あのひとは、それしか言わなかったけれど……
勝真さんのことで間違いないと思うんだ。
「とにかく、お前が『向こうでやりたいこと』……
その友人とやらに、礼を伝えることは出来たんんだな?」
「はい……ちゃんと伝えてきました」
本当の意味で彼女に伝わることは無いだろうけど……
それでも、伝えることが出来て良かった。
「まぁ、なんだ、色々言いたいことはあるが……
俺もその友人とやらに、感謝はしておく」
「勝真さんも、ですか?」
「ああ。
そのおかげで、お前と出逢えたんだろうからな」
「……!」
勝真さん……
「俺はお前と出逢って、いろんなことを学んだ。
前にも言ったが……お前と出逢えて、本当に良かったと思う」
「っ……あたしも……
勝真さんと出逢えて、本当に良かったです」
あなたという大切な存在と出逢えて、あたしは……
本当に幸せだから――……
「……さて、そろそろ帰るか。
いつまでも立ち話しているわけにもいかないからな」
「あっ……」
そう言いながら、さっさと歩き出してしまう勝真さん。
あたしはというと……
普通に一緒に帰っていいものか迷ってしまい、
その場から動けずにいた。
「……ああ、そうだ。
一つだけ言わせてもらうぞ」
「は、はい」
何だろう、と思いつつ、
振り返った勝真さんの言葉の続きを待つ。
「おかえり、」
「……!」
するとそう言って微笑み、両手を広げる。
そんな勝真さんに向かって、あたしは思いきり抱きつき……
そして、しっかりと答える。
「ただいま、勝真さん!!」