「よーし……」
今日こそは、花梨ちゃんの手助けをするぞー!
「、悪いがちょっと頼まれてくれないか?」
「へ?」
え、何だろう??
「朱雀門の辺りまで一緒に来てほしいんだ」
「朱雀門……?」
「それとも、花梨のところに行くか?」
うーん、花梨ちゃんのところに行こうとしたけど、
でも勝真さんがお願いしてくるなんて珍しいし……。
いちおーお世話になっているわけだし………
「じゃあ、朱雀門に行きます!」
「そうか、すまない」
「それで、ここで何かあるんですか?」
別に変わった様子は無さそうだけど……。
「いや、人を待っているんだが……」
「人?」
「……来たようだな」
……??
「おぉ、お嬢ちゃん。久しぶりじゃの」
「あ、あなたは……!」
(言い方は悪いけど)
こないだ勝真さんの悪口言ってたおばあさん……!
「えと、お久しぶりですね……
おばあさん、どうかしたんですか?」
ってか、勝真さんの待ってた人ってこのおばあさん……?
「いやね、お嬢ちゃんの話が面白くてねぇ、
また聞きたくなっちまったんだよ」
そ、そんなに面白かったですか……!?
「会いに行こうにも居場所が解らなくてねぇ……
困り果てていたとき、そっちのお役人が通りがかってのぅ」
「それで、お前を連れてくるよう頼まれたんだ」
「あ、そうだったんですか……」
それでこの人と待ち合わせしてたんだな……。
「おばあさん、あたしで良ければ
喜んでお話の相手になりますよ」
「そうかい? 嬉しいねぇ」
「、俺は仕事があるから京職の官衙に行くな。
夕方になったら迎えに来るから」
「はい!」
勝真さん、わざわざ迎えに来てくれるんだ……
「ばあさん、コイツは変な奴だが、
話をしていると学べることもたくさんある。
有意義な時間を過ごせると思うから」
「あぁ、ありがとうねぇ」
おばあさんと勝真さん……
なんか、仲良くなったみたい! 良かった。
あれ?でも今“変な奴”とか言ってなかった……?
……ま、いっか!
「やはり、宴の松原で手がかりを掴むことが出来ましたね」
「うん、あとは糺の森に陰陽師と一緒に行くんですけど……」
「今日は方忌みであろう?」
「はい、せっかく泰継さんも一緒なのに、
方忌みで北には行けないんです……」
「とにかく、こうしていても始まりませんし……
また明日出直しましょう、花梨さん」
「そうだね」
「そうかい、あのときの話は嘘じゃったのかい」
「はい、そうでもしないと、
あの場をまとめることも出来ないと思ったので……」
「そうじゃの、お嬢ちゃんの考えも正しい」
あたしとおばあさんは、あれから色々と話し始めて
今は、勝真さんが怒鳴ったときのことについて話していた。
「あたしにとって、あの人は本当に大切な人なんです。
身寄りのないあたしを、助けてくれたし……」
本当は、とっても優しい人なんだよ。
「お嬢ちゃんだって優しいじゃないかい」
「え、そんな事ないですよ!」
だって、あたしは本当に……
自分のやりたい事をやってるだけだから。
「いやいや、お嬢ちゃんは優しいよ。ただ……」
「……?」
「人に優しくすることは、いい。
だけど、難しい選択を迫られたときくらいは、
自分を優先するんだよ」
……!
自分を……優先する…………?
「極端な言い方だがね。
お嬢ちゃんには幸せになってもらいたいんじゃ……
こんな婆にも優しい、いい子じゃからのぅ」
「おばあさん……」
おばあさんの言葉には、どこか重みがあるように感じた。
「例えば、あの男と幸せになりたいと思ったら、
それを優先することだね」
「え……?」
あの男って……?
「、そろそろ帰るぞ」
「あ、か、勝真さん……」
……え!?
“あの男”って勝真さんのこと!?
「ちょちょちょ、ちょっと、おばあさん……!!」
「ふぉっふぉ、お嬢ちゃんは解りやすいのぅ」
完全にバレている……!!
(なんてこった!!)
「どうしたんだ?」
「ななな、何でもないです!!」
「そ、そうか」
こーゆーのを“年の功”って言うんだ、きっと……!!
「お嬢ちゃん、今日はありがとうねぇ」
「は、はい、こちらこそ」
「最後に言ったこと、忘れぬようにの」
「……はい」
自分を……優先するということ…………。
「……俺たちも帰るか」
「はい!」
何のためらいも無く、勝真さんが“俺たち”と言ってくれたことが
ちょっと嬉しかったりした……
……なんて、あたしも重症だなぁ。
とにかく、今は突っ走るしかないよね。
躓いたって、大丈夫……
きっとこの人が、助けてくれるから。