昨日、帰る途中で花梨ちゃんと相談した結果、
今日は二手に別れて具現化に専念することにした。
「あたしは勝真さんと一緒に行けばいいって言われたけど……」
花梨ちゃんの言ってた、
あと一人ついてきてくれる人って誰だろう……?
「おい、。出掛けるぞ」
「え、でも、誰か来るんですよね……?」
「あぁ。そいつも来たようだから、行くぞ」
「あ、そうなんですか、解りました!」
「なんだ〜、イサトくんのことだったんなら、
花梨ちゃんもそう言ってくれれば良かったのに」
で、あのあと勝真さんと一緒に外に出たら、
なんとイサトくんが待っていた。
「今朝花梨のところに行ったら、
と勝真と一緒に行ってくれって言われてな。
だからこっちに来たんだ」
「なるほど」
勝真さんとイサトくんは仲がいいみたいだし、
花梨ちゃん、チョイスが的確だ! さすが!!
「んじゃ、テキトーに具現化しよっか!」
「そうは言っても、いったい何処へ行くんだ?」
「あぁ、それなら花梨から伝言を受けてきたぜ」
「そっか! じゃあ、そこに行こう」
そんなわけで、あたしたちは
イサトくんが花梨ちゃんから預かってきたメモ通りに行動を開始した。
「最初は火之御子社か」
「じゃ、とっととその具現化ってやつをやろうぜ!」
「うん!」
どんどんお札手に入れちゃおう!
「また餌をやればいいんだな?」
「どうやらそうみたいですね」
「ここは火属性の土地みたいだから、
ちょっとだけ有利になるぜ、」
「本当? あたしも火属性だから、もっと有利になるね!」
やりやすくていいかも!
花梨ちゃん、けっこう策士なのかな……?
それからあたしたちは、続いて内裏、泉殿へと向かい、
具現化を進めていった。
「いっぱいお札が手に入ったね!」
「そーだな! けど、これで何が出来るんだ?」
「うん、例えば受けた穢れを祓ったり
体力を消耗しているときに使えば、元気になったりするよ」
「へぇ、便利なもんだな」
確かに便利だよね〜。
「けど、穢れを祓うなら花梨がやれば出来そうじゃないか?」
「そうなんですけど……
穢れを祓うって、けっこう神子に負担がかかるみたいなんです」
というか、花梨ちゃんの神子としての力が覚醒しきってないから、
無理はさせたくないというのが本音だけど……。
「このお札は五行の力を少しずつ分けてもらって出来たものです。
だから、神子にはそれほど負担もないですし」
「なるほどな!」
「それに、これならあたしも使えるし!
その間に、花梨ちゃんは別のこと……例えば術に専念できますよね」
「お前けっこう考えてるんだな、」
「ちょっと、失礼ですよ勝真さん!」
また一言余計なんだから〜!
「はは、悪かった」
「全然反省してないでしょう!もうっ」
「、もともと勝真はこんな感じだから、怒っても疲れるぜ。
その辺にしとけよ」
「……うん」
イサトくん、大人だなぁ……。
「……あっ!」
あれは!
「おい、何処に行くんだ、!」
「、待てよ!」
あたしは二人の声を無視して走った。
……って言っても、すぐそこまでだから、
何も危ないことは無いんだけどね。
「八角形だ〜!」
えーと、確か……法勝寺!!
「お前……法勝寺が好きなのか?
前も走りよってったよな?」
「だって、八角形の建物なんて、すごいじゃない!
何度見ても感心しちゃうよ」
そっか、泉殿の近くだったんだなぁ、法勝寺って。
だんだん地理を把握してきたかも!
「法勝寺か……来るのは久しぶりだな」
「勝真さんは、あんまりここには来ないんですか?」
「そうだな……まぁ、院の力が強く働いている土地だし、
そう易々と入れないってのもある」
「そうですか……」
その院とか帝とか、対立してるのをやめてほしいな……
それぞれみんな優しい人なのに、ね……。
「……!」
「どうしたんだよ、勝真」
「あ、いやっ……
、今、俺のことを呼んだか?」
「いいえ、呼んでませんけど……」
「そうか……だが、これは……」
どうしたんだろう、勝真さん……
……! これって、もしかして……
「これは……
この間、一条戻り橋でも見た…………」
心のかけら……。
「勝真さんの、二つ目の心のかけらですよ」
「心のかけら……」
二つ目まで見つかったんだ……
……でも、全部でいくつあるんだろう?
やっぱり四つなのかな?
「勝真、お前も心のかけらを失くしたのか?」
「ってことは、イサトくんも?」
「あぁ、自分じゃよく解らなかったんだけど、
どうやら俺も失くしたらしい」
「そっか……」
怨霊の力ってそんなにすごいんだな……。
……いや、心のかけらを失くした原因が怨霊だってのは、
漠然と理解してたんだけど。
(たぶん、牡丹の姫の力だと思う……)
早く京から怨霊を一掃したいよね……。
「勝真さん、イサトくんも……
しつこいようだけど、心の一部が欠けてるって本当に哀しいことなの。
だから、ちゃんと見つけましょうね……?」
そのままでいいや、だなんて、絶対に思わないで。
「……あぁ、俺は残りのかけらも必ず見つける。
お前と約束したしな」
「俺も……お前がそこまで言うなら、ちゃんと探すぜ」
「うんっ!」
良かった、二人とも解ってくれたみたい。
「じゃあ、今日はもう帰ろ!」
「そうだな、暗くなってきたし」
「真っ暗になる前に帰るぞ」
「はーい!」
どうか、みんなが全ての心のかけらを見つけられますように!