ドサッ
「いたっ……」
もっと、そーっと降ろしてくれてもいいじゃんか……。
「それで、ここは……
…………ん?」
なんか、見覚えがあるな……。
「確か、羅城門跡……」
土属性の場所だったよね……?
「なんか、もっと人がいっぱいいる所に降りたかったなぁ」
辺りを見ても、誰もいなさそうだし……。
「……と思ったら、なんか馬が走ってきた」
さすが、遙かの世界だね〜
「……なんて、
のん気なこと考えてる場合じゃないっぽいな」
馬がこっちに向かって走ってくるんだけど……
「乗ってる人、あたしに気づいてないわけ!?」
「危ねぇ、よけろ!」
「危ない!」
あんたが危ねぇっつの!!
「……うわ、なんかまた選択肢が出てきたし」
“(動かない方が逆にいいかも!)”
“(とりあえずどっちかに避けなきゃ!)”
えー、何この選択肢!
なんかムカつく……
「そんなわけで、あたしはどっちもお断り!
ってかあたしは悪くない!」
そうだよ、なんであたしが飛び出した感じになってんの?
「むしろ、そこの馬、止まれ!
あたしは絶対動かないから!!」
来るなら、来い!!
「…………いや、」
あたしは、絶対に助かる。
何かがそう告げてる……!
「どうどうっ、落ち着けっ!!」
……!
この声は……
「よし……落ち着け…………」
「天真、くん……?」
「は?」
……あっ、何言ってるんだ、あたし!
これは遙か2だよ! なんで1と混合しちゃってんの!!
それより、ここはこの人にビシッ!と言ってやらないと!!
「ちょっと、あんた! ちゃんと前見てたんですか?
通行人に突っこんでくるとか、普通ないと思うんだけど!」
「な、何だよ、お前だってぼーっとつったってたじゃないか」
「つったってたとは失礼な!
不慣れな地なのに、地理を把握してたらおかしいでしょう!」
ここに降りたのも、あたしの意思じゃないってのに……。
「……お前、京の人間じゃないのか?」
「まぁ、そうですけど」
「そうか……じゃあ、挙動不審でも仕方ないよな。
すまない」
「……いえ」
素直に謝ることも出来るんだな、この人……
ちょっと意外かもしれない。……なんとなく、感じ的に。
「……そうだ。どこか怪我はないか?」
「怪我はないですよ。奇跡的にね」
「そ、そうか……ならいい。
もしどこか悪くしてたら、後でもいい、俺を訪ねてこい。
左京八条で、平勝真って聞けばわかるはずだ」
平勝真……
そ、そうか、勝真さんだ!
この人は、遙か2の地の青龍・平勝真さんだ!!
「いくら2の初心者でも、キャラくらい知ってるよ!」
イサトくんとか出てくるの、2だよね!
「きゃら……?何の話だ?」
「あ、いえ。何でもないです」
やばいやばい!
変なこと口走らないように、注意しないと……!
「それより、左京って……朱雀大路より東よりですね。
左京に住んでるんですか?」
「あ、あぁ。……お前、京の人間じゃないんだよな?
自分で言うよりは、地理に詳しいな……。
本当は京の人間なんじゃないのか?」
ちっちっ。あたしは高校で日本史選択したからね!
その辺からくる知識ですよ。
「基礎知識だけですよ。
だいたい、実際何が何処にあるのかとか分かりませんから」
「そうなのか……」
「結局は、不慣れなのと変わりありません」
……ところで、あたしはこれからどうすれば?
とりあえず、地の青龍に会いましたけどね………。
……あ、そうだ。
「……あのう、勝真さん?」
「なんだ?」
「“龍神の神子”が何処にいるかご存知じゃないですか?」
この展開がゲームに沿っているなら……
もしかして、花梨ちゃんも勝真さんと遭遇したかもだし!
「龍神の……神子…………」
“龍神の神子”という言葉を出したとたん、
勝真さんの表情が曇ったように見えた。
「……“龍神の神子”は、院のもとにいる」
「院……」
簡単に言えば、帝を引退した人だよね。
でも、そんな所には行かないよね、確か……?
「そうですか……」
勝真さんの言ってる人と花梨ちゃんは別人だと思う。
何故言いきれるのかは分からない。
また、何かがあたしにそう告げてる気がするんだ。
「…………だが」
「……?」
「この間、東寺で会った不思議な奴…………
そいつが、龍神の神子を名乗っていた」
「え!」
マジですか!!
「院側にいる……源泉水殿と一緒にいた」
「院側……?
……そっか、勢力が二つに分かれてるんだ」
そんな事を友人が言ってましたよ、えぇ。
「……お前も本当に不思議な奴だな。
京の人間じゃないことは明らかなのに、京に詳しいなんて」
「……まぁ、後々ここに来る予定だったので
基礎知識だけ勉強してたんですよ」
「そうか………」
あながち間違ってない説明だと思わない?
さすが、あたし!
「ってことは、源泉水さんと言う人に聞けば
その龍神の神子を名乗る子に会えるかも……というわけですね?」
「……きっと、そうだと思う」
源泉水……うん、泉水は知ってる。じれっ隊だもん。
そうか、花梨ちゃんは泉水と一緒にいる(または行動してる)んだね!
「勝真さん、ありがとう!
あたし、その子の所に行かなきゃいけないから……
泉水……さんの所に行ってみますね」
とりあえず、花梨ちゃんに会わなきゃ。
そして、そこにいるであろう星の一族の子たち……
その子たちだったら、
牡丹の姫のことも少なからず知ってるはず!!
「って、お前、泉水殿が何処にいるのか知ってるのか?」
「あ! そーいえば、知らない……」
ど、どうしよう……!?
「……お前、面白いな」
「ちょ、馬鹿にしてるんですか!」
「これでも褒めてるんだぞ?」
ぜったい嘘だよ……
「仕方がないな。俺は帝側の人間だからあまり近寄れないが、
泉水殿がいる場所の手前まで送ってやる」
「本当ですか!」
それは大いに助かる!
「あぁ、任せとけよ」
「……ありがとうございます、勝真さん!!」
この人は……
「……勝真さんは、優しいんですね」
「なっ、そ、そんなことはない」
「謙遜しなくてもいいのに」
勝真さんは照れてるみたいだった。
なんか、可愛いかも!
「な、なんだ……?」
「え?」
「……くそっ、いやな感じだ……胸が――痛む――」
「か、勝真さん! どうしたんですか!?」
泉水のところに向かおうとまとまったところで、
勝真さんが突然苦しみ出した。
そして、辺りがものすごい光に包まれる。
「なんだ?
俺の中から、何かが抜けていったぞ!?」
「あ、あれは……!」
まさか、心のかけら……?
「くそっ、いらいらする……なんだ、この喪失感は。
大事なことが思い出せない……!」
「勝真さん、大丈夫ですか!?」
「っ……
……あぁ、大丈夫だ。取り乱してしまって、すまない」
「い、いえ……」
心のかけらが無くなるってのはとても哀しいことなんだけど、
勝真さんの身体には、直接の害はないよね……
良かった…………。
「それじゃあ、今度こそ泉水殿のところへ行くか」
「は、はい!!」
さ、目指せ! 泉水のいる所!!