「ふう〜……。
とにかく、玄武を無事取り戻せて良かったですね」
「だが、問題も残ってるぜ?」
「和仁親王のことですか……」
「ああ。帝を呪詛しているのは、和仁親王で間違いない」
確か、彰紋くんとは腹違いだって聞いたけど……
「本当の兄弟なのに……」
「……とにかく、今は帝の呪詛を解除するのが先決だ。
色々と探っていくのは、その後だな」
「……そうですね」
さっき花梨ちゃんに聞くのを忘れてしまったけれど、
おそらく、残る四神・白虎も呪詛に使われているはず……
……というか、この展開で白虎だけ無事ってのもおかしいからね。
ほら、ゲーム的にさ。
となると、これから白虎解放のために動くことになるのかな?
後で花梨ちゃんに聞いてみよう!
(それか、また文をくれるかもしれないな……)
……あ、それと、院にかけられた呪詛には、シリンや平千歳が
関係している可能性があるってこの間の文には書いてあったけど……。
平千歳、か……。
勝真さんの妹、なんだよね。
勝真さんは、そのことについてどう思ってるんだろう……?
「……? どうかしたか?」
「あ、いえ」
でも、なんとなく聞きづらいよねぇ……。
「夕餉までにはまだ時間がありそうだな。
お前はどうする?」
「あ、えーっと……
やっぱり、泉水の言ってた通り疲れてるみたいなので、
ちょっと部屋で休んでますね」
「解った、じゃあ後で呼びに行かせる」
「はい」
……だけど、院が彼女を神子だと信じているくらいなんだから、
ただ嘘を付いているだけとも考えにくい。
それ相当の力を持っているはず……。
それでも、龍の宝玉に選ばれる神子は一人だものね。
やっぱり何かがおかしい……
『あれ、この子……ラン?
ランって、天真くんの妹の、蘭?』
……そういえば、八葉抄やってるとき、
アクラムが初めに呼んだのは蘭だったよね。
それで、行方不明になった彼女を探して留年した天真くんと
あかねちゃんが知り合って、詩紋くんとも仲良くなっていくっていう……。
「……!」
待って……
「天真くんの妹の、蘭……」
言い方は悪いけど……
龍神を呼ぶための道具として、アクラムは蘭を召喚した。
結果として蘭はアクラムの意にそぐわず、黒龍を呼んだわけで……
「ということは……」
そういう呼び名はあまり広まってはいなかったけれど、
おそらく蘭は黒龍の神子だった……。
「……間違いない、3の朔ちゃんが黒龍の神子だから」
こういうときプレイヤーで良かったって思うよ。
(声優さんで判断するとか、そんな芸当この世界の人には出来ないから)
「となると、だね……」
千歳が黒龍の神子だという可能性は大いに高い……
「ってか絶対、そうだ!」
黒龍の神子ならば、怨霊をどうにかできるのも納得かな。
それと、八葉抄の流れから考えて、アクラムが千歳に対して
何らかの形で関与している可能性も高いね。
「よし……ここまでの推理は完璧だよね」
なんだか探偵になった気分だ……。
(てか、遙か2についてもっと知っていれば苦労しなかったような……)
「……とここまで考えてみたけど、
なんかさらに疲れてきちゃったし、お腹もすいたなぁ」
あたし、頭使うとお腹すくんだよね……。
「とりあえず、今までの推理はメモしておこう」
紙とペン……じゃない、筆を借りてメモっておこう!
「あ、すみません、女房さん!
何か文字が書ける紙と、筆をお借りしてもいいですか?」
「ええ、ではただ今お持ちしますね」
「ありがとうございます!」
あたしが宛がわれている部屋は、
基本あたしがいないと誰も入らないことになってるし、
これでメモして引き出しに入れとけば大丈夫だよ
「……よし、出来た」
「ふふ、何やら熱心なご様子でしたね」
「あ、えと……日記、みたいなものです」
「そうですか……
それで、そちらは一段落おつきになりまして?」
「はい、書き終わりました!」
この続きは、また後で考えることにしよう。
「では、夕餉の支度が整いましたので、おいでくださいませ」
「わあ、ありがとうございます!」
やったー、ご飯だ!
「お、来たか、」
「勝真さん!」
ここは、あたしと勝真さんがいつも一緒にご飯を食べてる場所。
個人の部屋とは違って、ちょっと広くなってるの。
「にしても、今日も今日で大変だったな」
「そうですね……」
なんだか、次から次へと問題が出てくる感じ……。
「けど、少しずつですが、確実に前に進んでいますよ」
「そう……だな」
京を救うって、すごく大きなことだと思うんだ。
それは、一瞬でできるほど簡単なことでもなくて。
小さな小さな積み重ねによって、
きっとあたしたちの願う未来は作られていくんじゃないかな。
「勝真さんは……
あたしのことを信じたいって、言ってくれましたね」
「……あぁ」
それならば、あたしはその期待に応えます。
……必ず。
「じゃあ、最後まであたしを信じてくれませんか」
「…………」
「何かに迷うことだって、たぶんあるのだろうけど……
あたしを信じて、一緒に来てくれませんか」
あなたを裏切るようなことは、絶対にしない。
「…………俺は、お前を信じて、お前に従おう」
勝真さん……
「ありがとうございます!」
「いや……礼なんていらない」
それでも、あたしを信じてくれるのならば。
それがあたしの力になるから、だから、
ありがとうを。
「よーし、じゃあ、ご飯冷めちゃいますから、食べましょうか!」
「…………そうだな」
そのとき勝真さんの笑顔に影があったこと、あたしは気付けなかった。