「ごめんください!」


          私がそう叫ぶと、その館の扉が開かれ、人が出てきた。





          「どちら様でいらっしゃいますか」

          「あ、あの、私は……」

          「花梨さん、ここは僕にお任せください」

          「う、うん」





          「こ、これは……もしや、あなたは東宮様では?」

          「はい、僕は東宮位に就いている彰紋です。
           こちらは平勝真殿のお邸で間違いないですね?」

          「はっ、おっしゃる通りでございます」

          「勝真殿と……最近からこちらにお住まいになっているはずの
           殿にお会いしたいのですが、取り計らって頂けますか?」

          「少々お待ちください」












          「(うわぁ、やっぱり東宮様ってすごいんだなぁ……。
            そんなすごい人と一緒に京を歩き回ったり、
            普通に「くん」付けしてる私って、一体……)」
 
          「花梨さん? どうかされましたか?」

          「あ、う、ううんっ! 何でもないよ!」



















          「客?」

          「はっ……東宮様と、よくは解りませぬが、
           あまり身分の高い様子ではない少女が一人……」

          「(彰紋と花梨か……)」

          「殿にもお会いしたいとおっしゃっております」

          「そうか……俺は先に行くから、を呼んできてくれ」

          「かしこまりました」

















          「お客さんですか?」

          「はっ……(勝真様と同じことをおっしゃるのだな……)
           東宮様と、よくは解りませぬが、
           あまり身分の高い様子ではない少女が一人……」


          彰紋くんと花梨ちゃんだね……。





          「勝真様にもお会いしたいとおっしゃっておりました」

          「それで、勝真さんは?」

          「お先に東宮様の元へ向かわれました。
           そして、あなたをお呼びするように、と」

          「そうですか、解りました! わざわざありがとうございます」















          「よっ」

          「勝真さん! おはようございます」

          「おはようございます、勝真殿」













          「ここかな?」


          あたしが案内された部屋には、すでに勝真さん、
          そしてあたしたちを訪ねてきたという花梨ちゃんと彰紋くんがいた。





          「それで、何かあったの?」

          「いえ……その、昨日あの後に解ったことを、
           二人に知らせようと思ったんですよ」

          「そうなんだ? わざわざありがとう」

          「わざわざ来なくても、文でも良かったぜ?」


          確かに花梨ちゃんは色々あって疲れてる訳だし、
          文で教えてもらってもあたしは大丈夫だったけど……





          「……でも、やっぱり直接話したかったですし」

          「そう? それだったら、いいけど……」


          まあ、直接話してもらった方が
          あたしも理解できると思うし……。





          「それでは、、僕と花梨さんから
           現在の状況についてご説明します」

          「うん、お願いね、彰紋くん」











          「……なるほど、やっぱり白虎も呪詛に使われていたんだね」

          「さん、解ってたんですか?」

          「ううん、ただの当てずっぽだよ」


          とゆうか、前にも言ったけど
          そうじゃないとゲーム的におかしいし……。





          「僕たちは、青龍・朱雀・玄武の解放に成功しています。
           そして、これから残る白虎解放のために行動することになりますね」

          「そうだな」

          「それで、何か手がかりは?」


          何処に行けばいいか解らないと、何も行動できないしね。





          「深苑くんの話では、
           最近東寺で妙なことが起こっているみたいで」

          「東寺でか?」

          「はい、だから、
           まず僕たちはそこに行ってみようと考えています」


          なるほどね!





          「じゃあ、東寺に行ってみて、調べるって感じだね」

          「はい!」

          「早速行ってみるか」

          「そうですね」


          そんな訳で、花梨ちゃんと彰紋くん、そして勝真さん、あたしの四人で
          東寺で起こっているという妙な出来事について調べに行くことにした。






















          「東寺で何かおかしなことが起きているって……
           いったい何が起きているんだろうね?」

          「そうですね……」









          「ちっ。どうしたんだ? また水を汲みにいかなきゃ……。
           ねーちゃんたち、ちょっとそこどいてくんない?」

          「どうしたの? 何かあったの?」

          「うーん。悪いけど、何があったかあんまり人に
           べらべらしゃべるなって言われてるんだ。

           ねーちゃんたちが京の町を取り仕切る京職だったら、
           話はまた別だけどな」

          「京職でなきゃ話せないって……」


          京職って、適役がいるじゃないですか!





          「勝真さん、お願いしますね!」

          「ったく、人使いが荒いな」

          「そ、そんなんじゃないですよ!」

          「解った解った、俺に任せろ」


          って、勝真さん絶対解ってないよね!?











          「うん? なんだ。にーちゃん、京職か?」

          「ああ、そうだ。
           いったいこの東寺で何が起きてるんだ? 教えてくれ」

          「うん、実はさ……最近ここいらでは、
           水のもちがすっげー悪くなってんだよ。

           ちょっと汲んでおいただけで真っ黒に水が濁って、
           ひでぇにおいになるんだ」

          「水がすぐに悪くなるだって?」


          水がすぐ腐っちゃうってこと?
          けど、真夏でもないのにそんなにすぐに腐っちゃうものなの?





          「うん、だから仏さんにあげた花瓶の水も、
           こうやってしょっちゅう替えてんだよ」

          「そうか……」

          「ねぇ、君、他でも似たような話を聞いてないかな??」

          「そういや、蚕ノ社でも同じように、
           湧き水が真っ黒に濁っちまったって聞いたっけ」


          蚕ノ社、か……。










          「水には普通、穢れを洗い清める力があるのですが。
           いったいどういうことでしょう」

          「これって、やっぱり呪詛のせいですかね……?」

          「そうかもしれないね」


          東寺や蚕ノ社の水がすぐ真っ黒になってしまうことが解ったけれど、
          その男の子もそれ以上は知らなかった。

          そのため、あたしたちは男の子の勧めで蚕ノ社にいつも来ているという
          お爺さんに話を聞くことにしたんだけど……






          
『うん。だけど、行ってもちゃんと話してくれるかどうかわかんないぜ。
           人生経験の豊かな相手じゃないと話をしても面白くない、
           ってのがじーさんの口癖だからさ』








          「人生経験の豊かな人と、蚕ノ社へ行けばいいんですよね」

          「でも人生経験の豊かな人ってどーゆーこと??」
 
          「ある程度、年食ってるヤツってことだろうな」


          ある程度、年を……?


          確か、遙か2で一番年上なのは翡翠さんか……

          ……だったら、翡翠さんがいないと話も聞けないかもね。
          出直すしかないかな……。













          「じゃあ、今日はこれくらいにして邸に戻らない?」

          「そうですね、僕もさんのご意見に賛成します。
           こうして毎日歩き詰めだと疲れも溜まってしまいますから」

          「ああ、じゃあ今日はこれで解散だな」

          「はい」











そして、また改めて蚕ノ社を訪ねることになった。