――…………
「……ん…………?」
ここは……?
「……ああ、やっと起きたか?」
「かつざねさん……」
あたし……どうしたんだっけ……
「……お前は泣き疲れて寝ちまったんだよ」
「泣き、疲れて……?」
『勝真さんは……あたしを信じたいと、助けてくれると、
あたしと会えて良かったと言いながら、
どこか冷めた心であたしを見ていたんですか!?』
……! あたし……
「……ご、ごめんなさい、勝真さん……!」
あたし、あのまま勝真さんにあたっちゃったんだ……!
「……いや、謝るのは俺の方だ」
「でも……」
「俺は、お前を信じると言いながら、
どこか信じていない部分もあったんだろう。
お前は俺を本気で信じてくれてたってのに、ひどい話だよな」
勝真さん……。
「……俺はこうやって生きてきたから、すぐには無理かもしれない。
だけど、少しずつ変わっていけたらと思う」
「…………」
「俺が変わっていけるように、お前にはそばにいてほしい。
お前と一緒なら、変わっていける気がするんだ」
あたしと……一緒なら…………?
「情けない話だがな……。
……これからも、一緒に京のために頑張ってくれないか?」
「…………」
「俺は、お前の言葉を受け止める。
その言葉を持って、諦めないでやってみたい」
「だから、俺と一緒に来てくれ…………」
勝真さん…………
「これからも……一緒に頑張りましょうね、勝真さん」
「…………」
「あたし、あなたと一緒じゃなきゃ住むところが無くなっちゃいますから」
「……何言ってるんだよ、ったく」
本当は住むところなんて、どうだっていいの。
あたしは、あなたと一緒にいたんです。
「勝真さん、ありがとうございます!」
「なんでお前が俺に礼を言うんだよ」
「だって、勝真さんが心からあたしを信じようと思ってくれたから」
知り合って大して経っていないのに、
それでも信じようと思ってくれたのは。
やっぱり、あなたのいいところだと思うんだ…………
「日も暮れてきちゃったし、そろそろ帰りましょうか」
「…………そうだな」
人は、すぐに変わることなんて、やっぱり出来ないよ。
それは解ってる。
でも、それでも少しずつ変わろうと、そう思ってくれれば。
あなたはきっと、変われるから。
あたしだって、もっと優しいひとになりたいから…………
だから、一緒に進んで行きましょう。
どちらかが迷ったときも、どちらかが助けてくれると、そう思うから。
「ねぇ、勝真さん?」
「何だ?」
「勝真さんは、初めから全部諦めてるなんてこと、
ないじゃないですか」
「は……?」
そう、そんなこと無いの。
「あたしが泣いたとき、泣き止むようにって、
一生懸命がんばってくれたましたよね。
本当に全てを諦めている人が、そこまで必死になれるでしょうか」
答えは違うでしょう?
「だから、もう少し自分に自信を持ってくださいね」
「……」
「なんて、あたしもそんな偉そうなこと言えないんですが」
でも、あなたはそんな人じゃないってことだけ、解ってくださいね。
「ん〜、今日のご飯は何ですかね! 楽しみです」
女房さんの作るご飯は何でもおいしいからね!
「……、俺は…………」
「え?」
「…………あ、いや、何でもないんだ」
何なんだろう??
「……さ、帰ろうぜ。また馬に乗っていくが、大丈夫か?」
「なっ、大丈夫ですよ!」
失礼な!
「はは、なら安心だな」
「そうですよ! 今度は上手く乗ってみせますからね!」
「………………」
『本当に全てを諦めている人が、そこまで必死になれるでしょうか』
人を動かす言葉を持っているお前を、俺は尊敬するよ。
その言葉で俺は変わっていけると思う。
こんなに情けない俺に、お前は真剣に向き合ってくれた。
そして……
『あたしは、一生懸命お仕事してる勝真さん、好きですよ!』
その笑顔と優しさに、俺は救われている…………
「……、俺は…………」
お前のことが……好きなんだ…………