『紫姫、院に憑いていた怨霊が復活したってことは、
           帝に憑いていた怨霊も復活する可能性があるんじゃない?』






          「そう言ったのは、あたしなんだけど……」


          かな〜り気になるんだよね……





          「…………よしっ」


          気になるなら、確かめに行けばいいんだ!










          「勝真さん、おはようございます!」

          「あぁ、おはよう、。どうかしたのか?」

          「勝真さん、今日はお休みでしたよね?
           ちょっとお願いがあるんですが……」

          「……?」


          御所って一人じゃ行きづらいし……
          (というか、話を聴いてもらえるのかって感じだし……)





          「一緒に御所まで行ってもらえませんか?」
 
          「御所? なんでまたそんな所に行くんだよ」

          「はい、ちょっと確かめたいことがあって……」


          その後、あたしは事の経緯を勝真さんに説明した。
          昨日のことは昨日のうちに話してあったんだけど、
          詳しいことは省略しちゃってたからね……。





          「だったら、帝のおそばまで行ってみるか」

          「はい!」


























          そんなわけで御所の前まで来てみたけど……



          「何だか嫌な感じがしますね……」

          「……そうだな」


          まさか、本当に怨霊が……












          「さん、勝真殿!」


          この声は……





          「彰紋くん!」


          声のした方を見ると、予想した通り彰紋くんがいた。





          「そんなに慌ててどうしたの?」

          「帝に憑いていた怨霊が復活したんです!」

          「えっ!」


          やっぱり、この嫌な感じは怨霊のものだったんだ!!





          「龍神の神子を名乗る女性が怨霊を復活させたらしいと、
           内裏の噂になっているんです。さん、何かご存知ですか?」

          「神子が怨霊を……?」


          花梨ちゃんがそんなことするはずないし……





          「第一、怨霊が復活しただなんて、
           花梨ちゃんは知らないと思う」

          「では、花梨さんに対する濡れ衣というわけですね……」

          「そうなるね」


          それも考えなければいけない事だろうけど……










          「今、考えなければいけないのは、怨霊のことだよ」
 
          「そうだな……
           彰紋は、花梨のところへ知らせに行ってくれ」

          「解りました。しかし、勝真殿とさんは……?」

          「あたしたちは、先に怨霊の所に向かってるね」


          あたしに封印の力は無いけれど、
          食い止めることなら出来ると思うし……





          「…………無理は、しないで下さい」

          「解ってるよ」


          花梨ちゃんに今日の分の造花があるのか心配だけど……
          おそらく、来てくれるだろう。

          そうならないと、ゲーム的におかしいからね(苦笑)





          「よし、行きましょう、勝真さん!」

          「あぁ!」























          「花梨さん!」

          「彰紋くん、どうしたの? 何かあった?」

          「帝に憑いていた怨霊が復活したんです!」

          「ええっ!」



          「御所の前で偶然会ったさんと勝真殿が、
           先に向かっています」

          「じゃあ、私たちも早く行こう!」
 
          「はい!」
















          「さん! 勝真さん!」

          「あっ、花梨ちゃん!」


          あたしと勝真さんが応天門の手前にいるとき、
          彰紋くんが呼びにいった花梨ちゃんがやって来た。





          「大丈夫ですか!?」

          「うん、あたしたちは何ともないけど……」

          「何かあったんですか?」

          「……あれだ」

          「え……?」


          花梨ちゃんは、勝真さんが指差す方を見た。





          「花梨さん、あれは……」

          「深苑くん! どうしてここに……?」


          そう、あたしと勝真さんが応天門までたどり着けないでいたのは、
          その手前のところに深苑が現れたからだった。










          「神子までやって来たか……。
           私は怨霊を治めに参った」

          「くだらぬことを言うな。
           星の一族のお前にそのようなことは出来ない」

          「あっ、泰継さん!」


          泰継さん、それに翡翠さんも……。





          「これで地の四神が揃いましたね」

          「あぁ……
           だが、花梨が行かなければ怨霊は静まらないんだろ?」

          「その通りだ。
           龍神の神子以外の者では、怨霊は鎮められない」

          「お主らには関係なかろう! 手出しは無用だ」


          深苑は意地を張っているみたいだけれど……





          「なんて言われようと、
           あたしたちがここで帰るわけにはいかないの」

          「うん、さんの言う通りだよ、深苑くん……
           …………! さん、この気配……!」

          「うん……」


          間違いない、アイツだ……

          アクラム…………











          「フフ、また会ったな」

          「アクラム……なぜ、ここにいるの?」

          「アンタは何を企んでいる?」

          「今はお前たちには用はない。少し黙っていろ」


          なっ……“黙ってろ”って何それ!!






          「深苑……神子はてこずっているようだぞ。
           手伝わずによいのか?」

          「…………」


          神子? 花梨ちゃんはここにいるわけだから……

          …………あ、そうか、千歳のことだ!
          やっぱりこの一件には千歳も関わってるんだ……!

          あたしが結論を出したのと同時に、
          深苑が応天門の方へ走り出した。










          「フッ、あれは怨霊のもとへ一目散に走っていくぞ。
           お前たちはどうするのだ?」





          「……とにかく追いかけよう、花梨ちゃん!」

          「はいっ!」





          「お前たちの奮闘を楽しみにしているぞ」





          「…………」


          アクラム…………















          「、考え込むのは後だ。
           とにかく、今は応天門の怨霊を何とかするのが先決だろう」

          「はい……そうですね、勝真さん」

          「今の男は追わなくてもいいのですか?」
 
          「アイツも気になるけど……やっぱり今は怨霊だよ」

          「はい……行きましょう、みんな!」


          花梨ちゃんの掛け声に合わせ、みんなが同時に走り出した。



















          「千歳殿! 怨霊は……」

          「まだ暴れたりしないわ。
           けれど今、怨霊を鎮めなければ……」



          
ゴオオォォ

















          「…………」


          この気配……
          怨霊が暴走しかけてるのかな……。





          「どうした、?」

          「勝真さん……。 
           急いだ方がいいかもしれません」

          「……! ……解った、行こう」

          「はい!」











          「おや、どうやら彼女がもう一人の龍神の神子らしいね」


          翡翠さんがそう言った後に応天門の方を見てみると、
          深苑と一緒に一人の姫が立っていた。


          あれが黒龍の神子、平千歳……





          「……ねぇ、千歳さん! 深苑くん!」

          「あなたは白龍の……。何をしに来たの」

          「それは私のセリフだよ。
           あなたも怨霊を浄化とか封印とかしようとしているの?」

          「浄化?封印? 
           ……ああ、あなたはそれらを行いに来たのね」


          それって、千歳は別のことをしに来たってこと?





          「……千歳、だったらあなたは何しに来たの?」

          「牡丹の姫まで……。来ないでほしかった、会いたくなかった。
           …………邪魔されたくないのに」

          「えっ、今、なんて……」


          あたしたちが邪魔……? 
          どういうことだろう…………











          「来るな神子、姫。
           お主たちと私たちはもう異なる道を歩いているのだ」


          何とか千歳と話をしようとする花梨ちゃんやあたしを、
          深苑は寄せつけないようにと言葉を発した。





          「深苑、話し合わずして何も解決しないよ」

          「話し合いなど必要ない。もう、そのようなものは無意味だ」

          「でも深苑くん、」



          
ゴオオォォ






          「……!」


          怨霊が暴走する寸前まで来てる……






          「だめです、花梨さん! 
           怨霊が……もう時間がありません」
 
          「彰紋くんの言う通りだよ、花梨ちゃん! 
           とにかくこの怨霊を封じよう!」

          「はい、解りました!
           深苑くん、千歳さん、そこをどいて! 怨霊を封印するから!」

          「怨霊を封印……? だめよ、だめ。そんなこと……」


          千歳はどうしてあんなに頑なに……?












          「千歳、いい加減にしろ!」

          「私はどかないわ」

          「千歳!」


          今まであたしたちのやり取りを黙って見ていた勝真さんが、
          とうとう千歳を怒鳴りつけた。
          だけど、それでも千歳はその場を動こうとしない。



          
ゴオオォォ






          「…………」


          もう、時間切れなんだ……





          「花梨ちゃん!」          

          「はい! 
           千歳さん――千歳! そこをどいて!」


          何か怨霊を封印してほしくない理由が、千歳にはあるみたい。
          だけど、あたしたちもここで怨霊の暴走を黙認するわけにはいかないの。





          「やめて……お願い…………!」



          
ゴオオォォ





          「みんな、行きましょう!」










その声に合わせて、あたしたちも戦闘体制に入った。