運命というものを信じていた訳ではないけれど、
ここまで来ると信じざるを得なかった。


みんなの姿、名前も声も前世と同じ。
就いている仕事も大して変わりない。

そして、今の状況も……





【輪廻】 同じことを繰り返すこと。















輪廻-現世篇-
















「山崎くん!」

「三人とも、来てくれたんですね!」


現場では山崎くんと他の警官たちが、
少し離れた場所で待機していた。





「どうだ、状況は」

「先ほど電話したときと変わりません。
 人質もそのままで……」

「そうか」


でも、このまま待ってるだけじゃラチがあかない。





「このまま待ってるだけじゃ意味がねェ。
 これから強硬突破するぞ」

「ですが人質が……!」

「わかってる」


人質の救出が最優先に、強行突破に出るという。










「俺がおとりになるから、建物の裏から……
 、総悟、お前らが行け」

「……!」


このとき、ふいに……
血を流して倒れている土方さんの姿が、私の脳裏をよぎった。

前世のときの記憶だ。





「…………」


なんで急に、あのときのことを……

土方さんにおとりをさせたらいけないってこと?

ただの勘だって言われたら、それまでだけど……
でも、なぜだか確信はある。





「おとりは、私がやります」

「なっ、何言ってんだ、!」

「お願いします、やらせてください」

「だが……」


もう、誰も失いたくない。

大好きな仲間も、愛する総悟も。
だから、私が行くの。










「作戦変更ですぜ、土方さん」

「なっ……」

「俺とさんがおとりになりますから、
 土方さんが人質を助けてくだせェ」

「「……!」」


総悟……!?





「ちょっと何言ってるの、総悟!」

さん一人にそんな役やらせられねェ」

「だけど……」

「…………わかった、おとりは二人に任せる」


総悟と二人でおとり役を……。


(本当にこれで大丈夫? 私はみんなを護れる?)





「頼んだぞ」

「了解でさァ」

「……わかりました」


こうして、私と総悟がおとりとなり強硬突破して、
人質を救出する手はずとなった。















「…………」

「おとり役が怖いですかィ?」

「……!」

「今ならやめられますぜ」

「……やめない。
 私が怖いのは、おとりじゃないから」


何よりも怖いのは、総悟……
あなたが死んでしまうこと。

もし、前世と同じようなことが起こったら……





「…………」


総悟も、みんなも……





「俺が付いてますぜ、安心してくだせェさん」

「…………うん」


そう言って、総悟は私の手を握ってくれた。

総悟は前世から変わらない。
私の不安を、簡単に取り払ってくれる……










「土方さんが合図してまさァ……行きますぜ?」

「うん!」


わざと目立つようにして、
私たちは正面から建物の中へと突入した。










「なっ……なんだテメェら!
 この人質が見えないのかァ!?」


興奮した犯人が叫ぶ。





「何も見えてないのはアンタの方でさァ」

「人間ってのは不便だよね、目が二つしか無いなんて」





「ぐあっ……!」





「それに、後ろが見えないし」


裏手から潜入した土方さんが犯人を蹴飛ばし、
ひるんだスキに人質を保護した。










「ぐうっ……」


土方さんの蹴りがかなり効いたらしい。
犯人はうずくまって苦しんでいる。





「観念しなさい」

「もう逃げられないぜィ?」


私と総悟が逮捕しようと、近づいたそのときだった。





「くそっ……ふざけやがってェ!」

「「……!」」


犯人が叫んだ直後、私たちの間を銃弾がすり抜ける。










「まさか、銃を所持してたなんて……」

「ナイフだけかと思ってやしたがねィ」


持っているのがナイフだけだったら、
間合いを取りながら蹴り飛ばすつもりだった。

でも銃は……あれは飛び道具だから厄介なんだよね。
自分も持っているから、わかるんだけど。










「よくも俺をコケにしやがって……!」


犯人は頭に血が上っている。
このままだと何をしでかすかわからない。





「俺の気持ちも知らずによォ!!」










「…………わかるよ」

「「……!」」


犯人と……
そばにいる総悟も、私の突然の言葉に驚いたようだった。





「愛する人を失った悲しみ、痛いほどわかるよ。
 でも、だからってこんなことするのは間違ってる」


一緒に逝ってしまったとはいえ、
私も総悟を失ってしまったことには変わりない。





「う、うるせェ……黙れ!!」

「黙らない。
 こんなことしたって、失った人は戻ってこないから」

「黙れ……黙れ黙れ黙れェェェ!!!


犯人が叫び、こちらに銃口を向けてきたけれど……
私は、避ける体勢に入りきれてなかった。





「っ……!」

さん!」


総悟が私の前に飛び出してくる。





「総悟……!」


このままじゃ、銃弾は総悟の体を貫くことになる。





「総悟、だめ……!」


私の脳裏をよぎったのは、やはりあのときの情景。
血だらけの総悟が倒れている、あのときの……










「総悟―――――――――――っ!!」


総悟が……


総悟が死んじゃう――……!!


















次へ