もう、同じことは繰り返したくない……!
「総悟―――――――――――っ!!」
輪廻-現世篇-
……。
…………。
辺りは静まり返っていた。
先ほど騒いでいた犯人の声も聞こえない。
「…………」
いつの間にか怖くて目を閉じていた私は、
音から周りの様子を探ろうとする。
「総悟……?」
怖いけど、確かめなくちゃ……。
そう思って、そっと目を開けると。
「……!」
「どうしたんでィ、がビビるなんて珍しいねィ」
あの距離であの体勢じゃ、
銃弾を避けるのは無理だと思ったのに。
総悟は全くの無傷で……もちろん死んでなどいない。
「いったい何が……」
……!
「それは……!」
総悟が手にしている物を見て驚いた。
見覚えのありすぎる物。
そう、それは……
前世で“総悟”が使っていた刀だ。
「なんで、それを……」
「そりゃあ決まってるだろィ?
俺の刀だからでさァ」
焦る私とは反対に、淡々と答える総悟。
どうやらその刀で銃弾をはじき、
犯人を峰打ちして気絶させたらしい。
「そうじゃなくて……
なんで『今の総悟』が、その刀を?」
あり得ないよ……。
「今も昔も関係ねェ、これは俺の刀なんでィ」
「…………」
「それに、昔の俺が使ってた物なんだから、
今の俺が使ったっていいじゃねェかィ」
「……!」
何を……言ってるの?
「その言い方じゃ、まるで……」
まるで総悟にも、
前世の記憶があるみたいじゃない……。
「総悟……私、今の名前はっていうの。
でも、昔は違う苗字を名乗ってた。何かわかる?」
望みを託すように、私はそんな問いを投げかけた。
対して総悟はというと、何でもないことのように答える。
「知ってるぜィ、『沖田』だろィ?」
ああ、やっぱり……そうなんだね。
「総悟にも……前世の記憶が、ある」
「あァ。もだろィ?」
「うん……
私も、前世の記憶を持って生まれたの」
総悟はもう私のことを「さん」付けで呼んでおらず
敬語も使っていないことに、そこでやっと気づいた。
「総悟、私は……!」
「、俺は今でもお前のこと愛してる」
「……!」
そんなの、私だって……
「私だって……そうだよ……!」
「本当はずっと言おうとしてたんだ、でも……」
「でも?」
「がときどきすごく辛そうな顔してたから、
言わない方がいいと思った」
そっか……そうだったんだね。
ずっと知ってたけど、私のために……。
「それにしても、その刀……どうしたの?」
「なんかウチの倉庫にあったんでィ」
「総悟んちの?」
「ヒマつぶしに、倉庫に入って物色してたんでさァ。
そしたら見たことのある刀がしまってあってねィ」
一目でわかった、
これは“俺”の刀だって。
「そっか……
でも、なんで今の総悟んちの倉庫にあったんだろ?」
「それは、俺の先祖が『沖田総悟』だからだと思うぜィ」
「えっ!?」
ちょっと待って、それって……
「『今の総悟』を辿っていくと、
『前世の総悟』に行き着くってこと!?」
「おう」
「すごい……」
やっぱりこれは……運命ってことなのかな。
「だけど、どうやって子孫を……」
「『俺たち』の子供がいただろィ?
「あっ……あの子が?」
「あァ、そこから永い永い時を経て
『俺たち』の子孫は繁栄していった」
刀は、お母さんが私たちの死を聞いて
せめて何か……と取ってきてくれたらしい。
「倉庫には次々に枝分かれしていた系図の本があって、
つい最近のものまで細かく書かれてたんだぜィ」
「そうなんだ……」
そんな物まであったんだね。
「その系図の一番右に載っていたのが『今の俺』。
そして一番左に載っていたのが誰だがわかるかィ?」
「ううん、わかんない。私の知ってる人?」
「『』」
「……!」
「『今のお前』の名前でさァ」
そんな……
「私を辿っていったら、『私』だったってこと!?」
「そういうことだねィ」
「うそ……」
でも、姿も声もまるっきり同じだし……
逆にそう言われたほうが納得できるかもしれない。
奇跡でしかないとは思うけど。
「テメェら……許さねェ!!」
気絶したはずの犯人が、いつの間にか目を覚ましていた。
相当頭に来ているようで、
その勢いのままこちらに向かってきている。
「仕方のない野郎だねィ……。
、『俺』の刀と一緒にこれもあったんでィ」
「これって……」
総悟に渡された物。
それは、“私”が前に……前世で使っていた刀だった。
「義母さんは、俺たち二人の刀を取ってきてくれたんでィ」
「っ……」
ありがとう……お母さん……!
「じゃあ、とっととコイツを逮捕しようや。
俺には銃よりこっちの方が使いやすいもんでねィ」
「そうだね……私もこっちの方が使いやすいよ!
でも真剣は危ないから鞘は抜かないでね、総悟!」
「わかってらァ!!」
→輪廻-未来篇-