輪廻-前世篇-















18×□年。

地球へ天人がやって来てから数年。
ここはもう、私たち人間のためには機能していなかった。








「オイ総悟、。市中の見回りに行くぞ」

「わかりました」

「仕方ないですねィ」


私は真選組で隊士をしている。

女で隊士をしているのは珍しく、
入隊した当初はなかなか認めてもらえなかったけど……

今ではそれなりの信頼を得ている。





「最近、前にも増して攘夷志士の活動が目立ってますね」

「天人による支配が、強くなってるからな」

「ムチャクチャな世の中ですぜ」


副長の土方さん、私と、一番隊長の総悟の三人で
今日の見回りにあたっていた。





「まァ、幕府も天人にヘコヘコし過ぎだから、
 気持ちがわからないこともないですけどね……」


天人は私たちより多くの知恵と技術を持っている。
強力な武器もその一つ。

だから幕府も、大きく抵抗することは出来ないのだ。


もしかしたら、星ごと吹っ飛ばされるなんてことも
あり得ない話ではないから……。










「俺たちだって、その幕府の下で仕事してんだ。
 あんまり文句も言ってらんねェぞ」

「わかってますよ」


そう、わかっているつもりだ。





も攘夷に参加したいのかィ?」

「そうだねェ……」


参加したいのかと言えば、そうなのかもしれない。
でも、それじゃ真選組とは敵になるから。





「正直、天人は許せないって思うことの方が多い。
 でも私は、真選組のみんなと戦いたくないよ」

「そいつァ良かった……
 俺もと斬り合うなんてごめんだぜィ」

「うん」


私もだよ。
特に総悟、あんたとは斬り合いたくない。

愛してるから……。





『おめでとう、総悟、ちゃん!』

『どーも』

『近藤さん、ありがとうございます』



総悟と私は、数年前に結婚した。

私の、今の名前は沖田。子供も一人いる。


欲しくて授かった子だけど、
二人ともこんな仕事をしているから……

申し訳ないけど、お母さんに面倒をみてもらっていた。


私たちの仕事を理解してくれているようで、
お母さんも嫌な顔をせず手伝ってくれている。










「それにしても土方さん、
 いつになったら副長の座を降りるんですかィ?」

「お前が死ぬまで絶対ェ降りねェぞ」

「それじゃあ意味ねェや」

「当たり前だ、お前に渡さないためなんだからよ」


二人は相変わらずの言い合いを始めた。

私はこれを聴くと平和だな、と思う。


仕事柄いつ命を失ってもおかしくないから、
今このときを大切にしたいんだ。





「…………」


――今このときを大切に。

もしかしたら、このやり取りを明日は聴けないかもしれない。
二人が死ぬかもしれないから?

ううん、死ぬのは私の方かもしれないから――……















あと数分で、勤務時間が終わるときだった。
ふいに土方さんのケータイが鳴る。



「おう、どーした」

『あっ、大変です副長!!』

「山崎か。何があった?」


どうやら山崎くんからの電話みたいだ。





『ターミナル近くのビルなんですけど
 あの辺りで、攘夷志士が暴れまくっているんです!』

「なんだと?」

『すでに局長たちが向かっています!
 俺は今から副長たちを迎えに行きますから!!』


内容までは聞こえないけど……

電話越しの山崎くんの声が、
どこか切羽詰っているように思えた。





「待て、そんなにやべェのか?」

『とにかく数がハンパじゃないんです。
 アレは50……いや、100人はいたと思います』

「100人だと? ふざけてんのか!」

『そんなワケないじゃないですか!』




「……?」


100人って何の数だろう……。





『あまり名の知れていないグループのようですが、
 奴ら打倒幕府を掲げて暴れまわっているんです!』

「戦力としてはそれほどじゃねーが、
 数が多くて制圧できねェってとこか……」

『はい、とにかくすぐ迎えに行きますから、
 今いる場所を教えてください!!』


電話はそこで切れた。

山崎くんが迎えに来てくれるようで、
その間に私たちは土方さんから事情を聞く。










「そんな……」


攘夷志士が、一気に100人も……?





「こりゃあ、なかなか厄介ですねィ」


近藤さんを筆頭に、土方さん、総悟も相当強いし、
真選組がその辺の奴らに負けるようなことはない。

だけど、100人なんて相手……
制圧しきれるのだろうか?

いくらみんなが強くたって……





「しんどいことになるとは思うが……
 向かってきた奴は迷わず斬れ。いいな、二人とも」

「「……はい」」


それからパトカーで迎えに来た山崎くんと共に、
急いでその現場へと向かった。














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