最近、の様子がおかしい気がする。
よそよそしいっつーか、なんか隠してるっつーか……

これは、調べてみる必要がありそうだな。










「……よし」


さっさと仕事を終わらせた俺は、早速あいつに電話をかけていた。





『はい、もしもし』

「あァ、か? 俺だが……」

『土方さん!』


とは、2ヶ月前から付き合い始めた。


それより前から知り合いではあったんだが、
俺が、自分の気持ちを伝えたのが2ヶ月前で……

あいつがそれに応えたのが、その翌日だった。










『どうかしました?』

「あ、いや……その、だな」

『はい』

「近藤さんが、明日休みにしてくれたんだよ。
 だから、久しぶりにどっか出掛けねェか?」


――正直なところ、自分が好かれている自信はない。

だが、俺の気持ちに応えてくれたってことは、
少しでも好いてくれてるってことだろう。



とは言え、俺は仕事ばっかりで
あんま頻繁に会えてねェんだよな……。





『せっかく両想いになったのに、そんなんじゃダメだぞトシ!』


近藤さんからそう言われたこともあって、
なるべく一緒に居るようにはしてるんだが……

誰かさんのせいで思うように仕事が片付かず、
あいつと会う時間がどんどん減っているのが現状だ。





『トシ! 明日だけでも絶対に休んでもらうからな!』

『いや、なんでだよ』

『な、なんでもだ!』



なんだかよく分からねェが、急にそう言われたからな。

が空いてるなら、ちょうどいいと思ったんだが……










『ご、ごめんなさい、土方さん……
 明日はちょっと……』


……またか。





「そうか……分かった」


いや、こいつにだって色々あるんだろうし、
毎回うまく出掛けられるとは俺も思っちゃいないさ。

だが、先週や先々週も、こいつは俺の誘いを断った。





単なる偶然かもしれない。
たまたま予定が合わなかったのかもしれない。





「…………」


だが、俺の誘いを断るこいつに何か違和感を覚える。
何かを隠してるっつーか……。










『あ、あの、土方さん?』

「……何だ?」

『その、あたし……
 土方さんと一緒に行きたい所があるんですが、』

「一緒に行きたい所?」

『はい』


じゃあ、明日そこに行けばいいじゃねェか。
なんでさっき断ったんだよ。





『その、なんて言うか……』

「……?」

『夕方、あたしが屯所まで行きますから……
 それから一緒に行ってくれませんか?』


夕方?





「朝からじゃダメなのか? 
 せっかく丸1日休みなんだぞ」

『あ、朝からじゃダメなんです!』

「なんでだよ」

『そ、その、えっと……
 色々と予定が詰まってまして!』


何だよ、予定って。

つーか、やっぱ……
なんか隠してやがんな、こいつ。










『ダメ、でしょうか……』

「……ダメじゃねーよ。
 夕方まで待ってればいいんだろ」

『は、はい!
 ありがとうございます、土方さん!』


全く状況はつかめねーが、喜んでるみてェだし……
とりあえずこれで良かったのか?





「じゃ、また明日の夕方にな」

『はい!』


その嬉しそうな返事を最後に、との電話は切れた。










「……はぁ」


あいつは確実に何か隠しているし、
それが気にならないと言ったら嘘になるが……

結局、あいつと一緒にいられるなら何でもいいんだ。





「……俺もヤキが回ったな」


そんなことを考えながら、その日は眠りについた。















……――翌日。



あいつがやって来るのは夕方なのに、
俺は朝早くから目が覚めてしまった。





「こんな早起きしたって、何もすることねェな」


仕事もしねーのに、屯所に居ても落ち着かないな。





「その辺を少し歩いてくるか」










屯所を出て、しばらくしたのち。



「こんな感じでいいかなぁ?」

「いーんじゃないんですかィ?」


聞き覚えのある声が聞こえてきた。





「今の声は、まさか……」


俺は物陰に隠れて、向こうの様子をうかがう。










「ありがとう総悟くん、お買い物に付き合ってくれて」

「あなたの頼みなら断れませんからねィ」

「ふふ、助かるよ」









「……何だよ、あれ」


なんで、が総悟と一緒にいるんだ?

見た感じ、一緒に買い物してるみてーだし……





『あ、朝からじゃダメなんです!』





「昨日、そう言ってたのは……」


総悟と買い物するからだったのか……?










「…………チッ」


なんで俺じゃねーんだよ……。





「クソッ……」


胸糞悪い思いを抱えたまま、
俺は逃げるようにして来た道を引き返した。










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