今日も誰かと会えるかな……


          そんなことを期待しながら、
          あたしは銀さんと一緒に江戸の街を歩いていた。




















行く先でまみえる者――第二話 狂乱の貴公子






























          「うわぁ〜……」


          朝からすごく賑やかな街だなぁ……






          「朝からうるせー街だろ?」

          「そうかな? 賑やかでいいと思うけど」

          「そうかねェ……」


          そう言いながら、銀さんはやる気のないような顔をした。





          「うるさくてゆっくり寝てられねーよ」

          「また、そういうことを「待ちやがれ、桂ァァ!!」

          「……!」


          今の……土方さんの声?







          「一体どこから……」















          「銀時!」


          あたしが土方さんの姿を捜しているとき、
          その人とは別の声が聞こえた。






          「ヅラ? 何してんだ、全力疾走なんかして」

          「ヅラじゃない、桂だ。
           俺とて好きで全力疾走している訳では
「桂ァァ!!」


          アレ? また土方さんの声が……






          「……どうやらゆっくり話している暇は無さそうだな。
           撤退するぞ、銀時!」

          「いや撤退するって俺たち関係ねーし」







          
「覚悟しろ、桂ァァ!!」


          あっ、向こうのパトカーに土方さん!
          と総悟くんも一緒だ!















          「ほらァ! なんか向こうの人バズーカ用意してるよ!
           このままじゃみんな危険だよォー!

          「
そのキャラうぜーんだよ!!
           ったく仕方ねェ、行くぞ!」

          「えっ、あっ、うん!」


          でもなんで逃げるんだろ……?















          「オイ総悟、桂が逃げる前にお見舞いしてやれ!」

          「へーい」


          ジャカ……






          「待て」

          「!? なんで止めんだよ!」

          「ヅラと一緒に銀時もいる。今撃ったら当たるぞ」








          「、この際、旦那には犠牲になってもらいましょう」

          「つーかあんな奴に遠慮する必要はねェ!」

          「そうじゃない」

          「は?」

          「……?」







          「ヅラと一緒にいる銀時と一緒に、お姉もいる」

          「「…………!」」

          「今撃ったらお姉にも当たるぞ」

          「「…………」」






          「チッ……仕方ねェな」

          「(さすがにトシでも、ホレた女は撃てないね。)」




















          バタバタ……



          「ふむ……どうやら撒いたようだな」

          「てめー、何が“ふむ”だオイ
           
俺たちまで巻き込みやがってよォォ!!

          「ちょ、銀さん、落ち着いて!」


          確かにびっくりはしたけれど、そこまで怒らなくても……!





          「(ちくしょう、せっかくのとのデートがよォォ!!)」






          「と、ところで、あなたたちは一体……?」


          なんで真選組に追われて……?






          「あァ、申し遅れた、俺は桂小太郎。こっちはエリザベスだ」

          「あ、あたしはです」

          『よろしく』

          「うっ、うん!」


          ボードで会話するんだなぁ……。






          「俺たちはこの江戸で攘夷活動をしているんだ」

          「攘夷……?」

          「あァ。攘夷志士を取り締まるのが、
           先ほど追いかけてきた真選組の連中でな」


          そっか、だから追われてたんだ……。






          「しかし……
           成り行きとは言え巻き込んでしまって申し訳ない、殿」

          「あっ、いえ! 気にしないで下さい、けっこう楽しかったし」

          「ちょ、ちゃん、銀さんは全然楽しくないんですケド
           つーか俺にも謝れヅラ

          「ヅラじゃない、桂だ」


          これ口ぐせなのかなぁ(笑)















          「ところで、殿は見かけない顔に思うが……」

          「あ、はい……あたし、少し前に
           故郷から出てきてこの街にやって来たんです」

          「そうだったのか」

          「はい」


          だから、見かけないのも無理はないんだよね。






          「銀さんの家で暮らし始めたんですよ」

          「そうか、ならこれからも会う機会があるかもしれぬな」

          「いや俺はもうテメーと会いたくねーよ」

          「よろしくな、殿」

          「はい!」

          「ってオーイ。銀さん無視すんなァ〜〜」


          あ、そういえば……






          「桂さんは、銀さんとけっこう前から知り合いなんですか?」


          すごく仲良しみたいだし……。





          「あァ……
           俺と銀時は、もともと攘夷戦争で共に戦っていた仲でな」

          「攘夷戦争……」


          銀さんって、攘夷戦争に参加してたんだ……。







          「オイ余計なコト言ってんじゃねーよ、ヅラ」
 
          「ヅラじゃない、桂だ。
           気にすることないだろう、減るものでもないし」

          「いや減るって」












          「桂さーん、エリザベスさーん!」

          「どうした?」

          「それが、ちょっと厄介なことになってまして……」

          「…………そうか」




          「……?」


          桂さんの仲間っぽい人が何か耳打ちしているけれど……
          どうかしたのかな?






          「すまない、殿。
           少し急用ができてしまったので、俺は失礼するぞ」

          「は、はい……あの、桂さん?」

          「なんだ?」

          「これ……あたしも万事屋なんです。
           だから、いつでも依頼して下さい」


          あたしは自分の名刺を桂さんに差し出した。





          「あっ、でも、あんまり悪いことはお手伝いできませんが……」


          攘夷活動はちょっと……。















          「解った、後でお願いするとしよう……部屋の掃除をな」

          「あ、は、はい!
           あの、エリザベスも良かったら名刺……」

          『ありがとう』

          「……!」


          エリザベスは、お礼の言葉と共にあたしの頭をなでてくれた。





          「ではな」

          「はい……あ、桂さん、それと……」

          「ん?」

          「あたしのことは“”でいいですよ」

          「……あァ、解った。それではな」

          「はい!」


          そうして桂さんとエリザベスは去っていった。
















          「……じゃあ、そろそろ行こうか、銀さん……
           …………って、アレ?」


          銀さん、なんだかいじけてる……?






          「銀さん、どうしたの?」

          「な〜んか俺、途中から蚊帳の外じゃなかったァ〜?」

          「そ、そんなことないよ」

          「そうかァ〜〜?」


          わぁ、かなりいじけてる……






          「ねぇ、銀さん、ほら! もう行こうよ」

          「いーよ、銀さんなんかほっといて」

          「銀さん……」


          もう……















          「……解った、銀さんがそこまで言うなら
           あたしもう先に帰っちゃうからね!」


          タッ!






          「え、あ、オイ、!!」


          もう、銀さんなんか知らない!!





          「やべェ、本気で怒らせちまったか? 
           とにかく追わねーと……」





















          「!」

          「……!」

          「やっと追いついたぜ」

          「…………」


          銀さん…………





          「銀さん、あたし……」

          「ん?」

          「あたしは、やっぱり……
           ここ来ないほうが、良かった……?」

          「……!」


          江戸に来たことは……間違いだった……?







          「…………そんなことねーよ、
           だったらお前を連れてきたりしてねーだろ」

          「でも、……」

          「俺にはお前が必要なんだ」

          「……!」


          “必要”…………











          「……俺も大人げなかったよな、悪かった
           だから……泣かないでくれ」

          「銀さん…………」


          どうしても涙をこらえることが出来なかったあたしを、
          銀さんはそっと抱きしめてくれた。





          「だって、ここでいっぱい知り合いを作りたいんだろ。
           それを、俺が止める権利も資格もねーしな」

          「ぎん、さん……」

          「…………ごめんな」

          「うんっ…………」


          あたし、同年代の知り合いって少ないの。
          だから、桂さんとも仲良くなりたいなって思って……。




















          「えーっとォ……じゃあ、行くか?」

          「そうだね……」





          「(あー、よりにもよって泣かせるなんて最低だろ、俺……)」


          銀さんは少し落ち込んでしまったみたいだけれど、
          “必要”という言葉だけで、あたしは嬉しかったから。





          「ねェ、銀さん」

          「え? あ、おう、どーした?」

          「甘味屋さんがあるんだけど、寄っていかない?
           何か食べたくなっちゃったし、銀さんも甘いもの好きだもんね!」

          「……! ……
           (ったく、なんでコイツは……)」


          ……?






          「ほら、銀さん行こう!」

          「あァ……そーだな」


          もうすっかり涙が消えていたの笑顔を見て、
          俺は安堵していたのだった。




















          To Be Continued...「第三話 最恐の女性