ピンポーン
「あれ?」
誰か来たみたい。
「誰か来たのか?」
「うん……ちょっと出てくるね」
「新聞の勧誘かババァだったら、追い返していいからなァ〜」
「もう、銀さんったら何言ってるの!
とりあえず出てくるからね」
「おー」
もしかしたら、銀さんの依頼人かもしれないしね。
行く先でまみえる者――第四話 空翔ける船の長
ガララッ
「お〜、留守かと思ったぜよ!」
「あ、出るのが遅くなってしまってごめんなさい……
……あの、それでどちら様ですか?」
「わしは坂本辰馬ゆうてのォ、快援隊っちゅーのを率いて
宇宙を回って貿易しとるんじゃ」
「貿易……」
宇宙って、すごいスケールだな……。
「ところでお嬢さん、一つ聞きたいんじゃが……」
「……?」
「銀ちゃん、はどこアルか」
「あァ?
なら客が来たってんで、さっき玄関の方に行っただろ」
「でも、なんか変ヨ!
私さっきからずっとのこと探してるのに」
「……ん?
(そーいや、新聞の勧誘にしちゃ長いな……)」
……。
…………。
ダッ!
「あっ、銀ちゃん! どこ行くネ!?」
「まさか、に何かあったんじゃねェだろうな……」
「だから、それ間違いだと思うんですよね」
「ん……?(の声……?)」
「間違いじゃないぜよ、ここに坂田金時っつー男がおるはずじゃ」
「いやだから、“金時”じゃなくて“銀時”さんですよそれ」
「そんなはずないきに、ここは“万事屋金ちゃん”じゃろ?」
「違います、“万事屋銀ちゃん”です!」
もう、この人、何回説明したら解ってくれるの!?
「お前はいい加減にしろォォ!!」
ドカッ!
「ごふっ!!」
ドサッ……
うわぁ……
……って、感心してる場合じゃなかった!
「銀さん、この人と知り合いなんでしょ!?
気絶させちゃっていいの……!?」
「こんな奴、知り合いじゃねーよ」
ええっ!
「いつまで経っても人の名前すら覚えないしよォ」
「あ、」
やっぱり間違ってたんだなぁ……。
「銀さん、この人とけっこう前から知り合いなの?」
「あー……まァな。
……ヅラが攘夷戦争の話、してただろ?」
「う、うん」
「そんときコイツも一緒に戦ってたんだよ」
そうだったんだ……。
銀さん、攘夷時代のことあんまり触れてほしくないみたいだから、
今まで深くは聞かなかったけど……。
桂さんもそうだけど、その頃からの友達もたくさんいるのかな……?
「ま、コイツは途中で戦争から抜けたけどな」
「えっ……どうして?」
「宇宙に行きたいからってよ」
「宇宙に……」
そっか……さっき言ってた貿易とかって、
ほんとに自分でやりたいと思ったことだったんだね。
「でもこの人、銀さんに用があったんだよね?」
起きる気配もないし、どうするんだろう……。
「ま、ほっとけばいーんじゃねーの?」
「ええっ!? いくらなんでも、それは良くないよ!」
さすがに可哀想だし……。
「とりあえず、家の中に運んであげよう?」
「けどよォ……」
「やはりここにおったか」
「え……?」
女の子……?
「どうやら、このバカの迎えが来たみてーだな」
「え?」
「このバカが苦労かけてしまったようじゃき、すまん」
「あの……?」
は、話が見えない……。
「あ、あの……あなたは?」
「わしは陸奥、このバカの下で働いとる者じゃ」
「そうなんだ……あ、あたしはって言うの!
“”でいいよ」
「か……よろしく頼むぜよ」
「うん!」
やったぁ、女の子の友だちができた!
「しっかし、おんし……白夜叉のコレか?」
「しろやしゃ……?」
そう言って陸奥ちゃんは小指を立てたけど……
しろやしゃって何だろう?
「知らんかったがか。
“白夜叉”とは、そこにいる銀髪の昔の通り名じゃ」
「え……?」
銀さんの、通り名……
「銀さんの通り名、格好いい!」
「そ、そうか?
(つーか、俺の周りって余計なこと言う奴ばっか……)」
…………あれ?
でも、そうするとさっきの陸奥ちゃんの言葉って……
…………!!
「ちっ、違うよ、陸奥ちゃん!
銀さんとはそーゆー関係じゃないの!!」
「ほ〜う」
「ただ一緒に住んでて、それで……」
確かに銀さんはあたしのこと助けてくれた……
けど、そんな関係じゃなくて……!
「一緒に住んじょるんか」
「ちょっと陸奥ちゃん、からかわないで!!」
「すまん」
絶対反省してないよー……。
「(、そんなに力いっぱい否定しなくても……。
銀さん、ショック…………)」
「冗談じゃ。
この男に、こんないい女がつかまえられるとも思えん」
「む、陸奥ちゃん……」
「オイ失礼だぞ、テメー」
それにあたしは“いい女”じゃないよ……!
「とにかく、今日のところは帰るぜよ」
「う、うん……もう宇宙に戻るの?」
「しばらくは地球で燃料を補給するから、
わしらも江戸におるつもりじゃ」
「そっか……じゃあ、また会えるね!」
「そうじゃな」
そうして陸奥ちゃんは、坂本さんを引き摺りながら帰っていった。
「…………なァ、?」
「なに?」
「そんなに銀さんの彼女っていう名目が嫌ですか」
「え……?」
『ちっ、違うよ、陸奥ちゃん!
銀さんとはそーゆー関係じゃないの!!』
もしかして、さっきの……。
「……ねぇ、銀さん」
「ん〜?」
「あたしがああやって言ったのは、銀さんが嫌だからじゃないよ」
「……?」
銀さんのことが嫌だったら、あたしはきっとここにはいないよ。
「銀さんはすごくかっこいいから……
あたしなんかと恋人設定にされたら大変かと思って。
だから必死に否定したの」
「…………」
お世辞じゃなくて、本当にかっこいいと思うんだよ。
見た目じゃなくて……人として、ね。
「あたしより、もっと素敵な人をつかまえるべきだよ(笑)」
「…………」
「ーー!!」
「神楽ちゃん……どうかした?」
銀さんと話してる途中で、神楽ちゃんが飛び出してきた。
「私ずぅっとのこと捜してたアル!
でも見つからないからゴミ箱も捜したヨ!」
「さ、さすがにゴミ箱には入れないよ……」
「、こっちで一緒に遊ぶネ!」
「う、うん、いいよ!」
「やったアル!」
ダダダ……
かわいいなぁ♪
「銀さん、中に入ろっか」
「ん? あ、あァ……そうだな」
「…………」
は、こんな俺のこと“カッコいい”って言ってくれる……
だったら…………
「例えば俺が告ったら……
お前は、俺を受け入れてくれるのか……?」
俺のその言葉は、誰にも届かずにそのまま空気に溶けて消えていった。
To Be Continued...「第五話 その男は危険ゆえに」