「確か、土方さんとの説明によると、
この辺りだったよね……」
二人から調査を依頼されたあたしは、
例の攘夷志士が動き回っているという倉庫に来ていた。
行く先でまみえる者――第六話 計り知れない闇を持つ
「いっぱい倉庫があるけれど……」
まず、どこにいるのかってとこだよね。
……。
…………。
「風の流れが、違う…………」
あの倉庫だね。
タッ
「へェ……
面白そうなことしてるじゃねェか、ククッ…………」
「…………」
おそらく、ここだと思うけど……。
「オイ、さっさと運び出すぞ」
「あァ」
「……!」
もしかして、アイツらが怪しい動きをしてる攘夷志士……?
「しかし、密輸ってのは儲かるなァ」
「ハハ、ホントだぜ」
密輸……。
そっか、アイツら密輸をしてるんだ……
「でも、何を……?」
もう少し調べたいけれど、アイツらがいたら……。
ドォン!
「……!」
「オイ、何だこの音は!」
「何かが爆発したようだな……」
「誰かに見つかったら厄介だ……
様子を見に行くぞ」
「あァ」
「……ラッキー」
行ってくれた♪
「今のうちに、調べさせてもらいます♪」
「…………ふぅ」
これで、おおかた調べられたね。
「長居しててもいいことないし、そろそろ撤退するかな」
それにしても……
「さっきの爆音は、いったい……?」
まるで、誰かがあたしの調査の後押しをしてくれたような、
そんなタイミングだった……
「…………まさか、ね」
そんなはずないよ。
「早く帰ろう……」
タタッ
「……!」
誰か……そばに、いる……?
「…………」
この感じ、ただ者じゃない……
誰なの……?
「よォ……スパイとは、ご苦労なこったな」
「……!!」
この顔は……!
『攘夷志士の中で一番危険な男だよ』
そう、の言ってた……
アレ? なんて名前だっけ…………
……あっ! そうだ……!
「真選組の野郎どもかと思いきや……
よもや、こんな女がスパイとは誰も思うまい……ククッ」
「あんたは……晋助…………」
って、名前しか思い出せないんですが……。
「…………お前、名前は?」
「、…………」
「か……
…………お前、俺に惚れてるだろ?」
……。
…………。
「…………は?」
「だから、俺に惚れてるんだろ?」
「いや惚れてないよ!!」
えっ、何この人!?
ほんとに攘夷志士の中で一番危険な男!?
変態の間違いじゃないの……!?
(もしくは自意識過剰!!)
「ククッ……面白ェ女だ」
「…………」
でも、やっぱりただ者じゃない感じはする……。
こんなことなら、の持ってたデータを
ちゃんと見てくるんだった……!
「……
お前は何故、ここで奴らの動向を探っていた?」
「……依頼されたからだよ」
「依頼、だと?」
「あたしは万事屋だからね」
さっきのは、あたしを油断させるためのお芝居かも……。
やっぱり用心しなきゃ。仲間もいるかもしれないからね……
「ここには俺一人しかいないぜ?」
「……!」
「クッ……“何故解った”という顔だなァ」
この男…………
「にしても、万事屋かァ……銀時を思い出すぜ」
「……! あんた……銀さんと知り合いなの?」
「そういうお前も奴と顔見知りか」
銀さんと晋助は知り合い……?
でも、一体どういう関係なんだろう……。
「まァ、なんだ……奴とは、昔からの仲でな」
「昔?」
それってまさか、攘夷時代の……
「…………ねぇ、あたしにもひとつ質問させて。
あんたは、どうしてここに居るの?」
さっきの攘夷志士たちとは、仲間じゃないみたいだけど……。
「少し月を見たくなってなァ……
その辺を歩いてたら、妙な動きをしてる女を見かけてよォ」
「…………」
「そいつが面白そうなことやってたんで
爆発起こして騒ぎ立ててみたってところだ」
…………!
「じゃあ……さっきの爆発は、あんたが?」
「あァ、そうさ。
しかしテロだなんて、ヅラになった気分だぜ」
「……!」
ヅラ? それって、桂さんのことじゃ……
やっぱり、こいつは攘夷時代に
銀さんと一緒に戦ってたのかもしれない……。
「…………」
「なっ、何?」
「俺の名を言ってみろ」
名前を……?
「しん、すけ……」
「あァ、そうだ。忘れんじゃねェぞ」
そう言い残し、
攘夷志士の中で一番危険だという男は去っていった。
「晋助…………」
あたしに協力してくれた真意も結局解らなかったけど、
一つだけ解ったことはある。
「あの男は……ほんとに、危険だ」
翌日、あたしはの持っていたあの男のデータを
くまなくチェックすることにした。
「クク…………」
、か……。
「面白くなりそうだ」
怯むことなく攘夷志士を調べ上げる度胸、その調査の正確さ、
退くタイミングを誤ることのない判断力に……
俺と対峙したときに、いち早く周囲を探ろうとしたあの構え。
どれを取っても、デキる女だというのは間違いねェだろう。
「奴と……銀時とも知り合いみてェだしな」
ついさっき持ってきた酒に手をつけながら、
俺は楽しみが一つ増えたことに喜びを感じていた。
To Be Continued...「エピローグ」