あの日を思い出してしまうから
私はずっと
雨が嫌いだった――……
幼少の頃、私はイタリアに住んでいた。
『お父さま、お母さま、おはよう!』
『ああ、おはよう』
『おはよう、』
両親と、一人娘の私。
一見どこにでもある普通の家庭だけど、実は……
『あなた、今日の任務のことだけど……』
『ああ、朝食の後で話そうか』
『ええ』
そう。
私の両親は、マフィアだった。
そんな両親のさらに両親……
つまり私の祖父母、その祖父母の両親も。
かなり前から、この家系の人は皆
マフィアとして活動していたという。
『よーし、!
明日はみんなで出かけるぞ〜』
『やったー!』
『今日はお母さまと買い物して……
夜ご飯は二人で作ろうね』
『うん!』
私は両親が大好きだった。
休み日には、いつも遊でくれた父。
一緒にお出かけしたり、ご飯を作ってくれた母。
でも、そんな両親も……
マフィア間の抗争に巻き込まれて、死んでしまった。
『ぐああっ!!』
『あな、た……』
『くっ…………
お前だけでも……生きろ……!』
『いやっ……
お父さまぁ! お母さまぁ!』
――両親が死んだ日。
その日は、朝から雨が降っていた。
『朝なのに、なんて暗い……』
あの日の私は、その雨に何か嫌なものを感じていた。
……今思えば、両親の死を
なんとなく感じ取っていたのかもしれない。
『そんなっ……』
『本当に不幸な話だが……』
目の前で両親が殺され、しばらく塞ぎこんでいたけれど……
ほんの少し、落ち着いてきた頃。
両親の死について、親戚に当たる人から真相を聞かされる。
両親はその抗争には直接関係なかったのに、
運悪く巻き込まれて、そして……死んだのだ。
『雨なんて……嫌いだ……』
大好きな両親が死んだ日に降っていた。
その日を思い出すから、私は雨が嫌いになった。
『、日本に行ってみてはどうかな?』
『日本……』
両親も好んでいた国だと聞いた。
そこに行けば何かある、
何かすべきことがあるわけじゃなかったけれど……
『私……日本へ行ってみます』
『そうか、それはいい』
このままイタリアに残っていても、悲しみに暮れるだけ。
両親はきっと、そんなことは望んでいないはず……
だから私は、勧められた通り日本へ行くことにした。
『ええっ、君もマフィアなの!?』
日本に行った私が出会ったのは、
ボンゴレファミリーの10代目ボス候補と……
『まさか、10代目を狙ってきたのか!?』
『獄寺は相変わらずおもしれーな』
そのファミリーたちだった。
『ボンゴレの存在は知ってるけれど、
関わったことはないよ』
『本当だろうな?』
『ちょっ、獄寺くん落ち着いて!』
同い年の彼らは、マフィアと言うにはあまりにも幼かった。
初めはそんな印象だったけど、でも……
リングを賭けてヴァリアーと戦い始めた頃から、
みんな少しずつ変わってきたんだ。
『やるよ! 可能性があるならなんだって!!』
ボス候補のツナは、自分の意志で勝つための修行を続けた。
『すいません…10代目……
リングとられるってのに、
花火見たさに戻って来ちまいました…』
獄寺は、自分の命をとるということを学んだ。
『時雨蒼燕流 攻式九の型 うつし雨』
山本は、受け継いだ流派を見事に自分のものにした。
『、お前もツナの修行に付き合え』
『うん』
リボーンに誘われて、私もバジルと一緒に
ツナを修行を手伝ったりもしていた。
『ツナがボスになったら、私もボンゴレにいれてもらおうかな』
『そいつはいいな』
いやっ……
お父さまぁ! お母さまぁ!
『…………』
あのとき両親は死んだけれど……
私の夢もまた、マフィアだった。
『ツナ』
『ちゃん!
良かった、君も来てくれたんだね』
修行を手伝ったからには、戦いの結末も気になるわけで。
守護者同士が戦うときも、並中まで出向いた。
私なりに応援していたつもりだった。
でも……
『それでは 雨のリング、
S・スクアーロVS山本武 勝負開始!!』
でも、雨の守護者たちが戦っているときだけは
応援に集中することができないでいた。
『雨……』
実際に、雨が降っているわけではなかった。
でも、そのフィールドが……雨を連想させるから。
雨は嫌いだ。
あの日を……両親が死んだ日を思い出すから。
怖いわけじゃない。
でも、どうしても好きになれない……。
――もちろん私のそんな想いなど、
戦いには全く関係のないこと。
憂鬱だった雨戦も終わり、残りの霧戦・雲戦も終わった。
大空戦もツナが勝利を収めて、見事次期ボスと認められた。
『一時はどうなることかと思ったけど……』
『勝てて良かったね、ツナ』
『うん……君も、色々と手伝ってくれてありがとう』
『どういたしまして』
そして訪れた、平和な日々。
あの戦いが、みんなにとって良かったのか悪かったのか
今の私には分からないけれど……
でも、みんなでならきっと、
いいファミリーを作っていけるんじゃないかな。
そう、思っていた。
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