私……
このまま死んじゃうの……?
「そんなことさせてたまるか」
でも……
こんなに血が流れて、こんなに苦しいのに……?
「しっかりしろよ。いつものお前らしくないぜ」
いつもの、私……?
暗闇の中にいた。
周りを見回したけど、何も見えない。
「誰か……誰かいませんか!?」
叫んだけれど、何の返答も無かった。
この暗闇の中には、私しかいないようだ。
暗闇の中に、たった1人で……。
「っ……」
怖かった。
どうして誰もいないのか分からない。
どうして私だけがここにいるのかも分からない。
私はどうなってしまうの?
ここに来るまで、何があった……?
「…………」
必死になって、記憶の糸をたぐり寄せる。
確か私は、さっきまで全く別の場所にいたはず……
「……!」
思い出した……
私、……私は……
夜の闇の中で……死にかけていたんだ――……
その日の夜。
コンビニに行った帰り、
いつものように公園を横切って帰ろうとしていた。
「……!?」
だけど、そのとき……
突然背中に衝撃を受けて。
痛みを感じて背中に触れてみると、
手に真っ赤な液体がついていた。
血だ。
「っ……」
私……背後から刺されたの……?
まさか、公園を歩いていただけで、
こんなことになるとは思っておらず……
どこか現実味を帯びていないようにも感じたが、
背中の痛みは、気のせいなどではない。
――やだ……どうしよう……!
「うっ……」
次の瞬間、かなり強い痛みが走る。
「……」
私を刺したと思われる奴が、
そのまま走り去っていくのが見える。
「…………」
私が何したっていうの?
こんな所で死ぬなんて、嫌だよ……。
冷静に考えれば……
刺されたのは、致命傷にならない場所だろう。
けれど、そのときの私には
「刺された」というショックが大きくて。
こんなにたくさんの血を流したこともないから、
冷静に考えることができないでいた。
「う……」
私……
このまま死んじゃうの……?
「そんなことさせてたまるか」
でも……
こんなに血が流れて、こんなに苦しいのに……?
「しっかりしろよ。いつものお前らしくないぜ」
いつもの、私……?
いつもの私って、どんな……?
私の問いかけに対する誰かの声が、
聞こえた気がしたけれど。
でも、その人の正体よりも
私は質問の意味を考えていた――……
――ああ、そうだ。
それで気がついたらこの場所にいたんだ。
「…………」
私はきっと、あのまま死んでしまって……
ここは地獄なんだろうか?
天国なら、もっと明るいイメージだし……。
「……ふふ」
大切な人を置いて先に死んでしまった私には、
地獄がお似合いということかな……。
そんな自虐的な考えも出てきた。
「……本当に、暗いな」
死んだという事実よりも、今はこの暗闇の方が怖い。
さすがに、地獄にだって電気くらいあってもいいはず。
そんな、妙なことを考えた。
「少し歩いてみよう」
そうして私は、光を求め暗闇の中を彷徨い始めたのだった。
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