大鎌を手にして。










仲間が「強い力を持った魂」を保護している間に、
黒を殺すこと……それが、オレの初めての仕事だった。


それだけならまだ良かったんだが、
仕事はまだ続くわけで。

再び襲われてしまう前に、対象の魂をあの世――
つまり、天界に送るんだ。





「じゃあ……今からお前を送るからな」

「は、はい」

「大丈夫だ、痛みは無いから」

「はい……」


魂を送る方法は、至って単純だ。

オレたちが持つ、この大鎌で魂を狩るだけ。
魂は痛みを感じないことが、唯一の救いだが……





「それでも……あんまりいい気持ちはしないよな」


この事は、まだには伝えていない。

冷静に話しちゃいるが、不安でいっぱいだろうし……。











「よぉ、跳ね馬ぁ」

「……スクアーロ」


ビルのてっぺんに座り、考え込んでいたオレ。

その隣に、いつの間にか同期のS・スクアーロが立っていた。





「お前、今回は随分とつらそうだな?」

「……オレはいつもこんな感じだろ」


――そうだ。

何度魂を狩っても、この仕事に慣れることはない。
いつも、苦しいと……つらいと感じてしまうんだ。





「…………」


だけど、オレは……
この仕事をやめるわけにはいかない。

続けていかなきゃならない理由があるから。










「今回は特に、つらそうだぜぇ?」

「……気のせいだろ」


今までと何が違うって言うんだ?

別に、いつもと同じように魂を狩るだけだろ……。






「気のせいかどうかは、そのうち分かる」

「……」


そう言い残し、スクアーロは去っていった。





「……なんだってんだ」


スクアーロは、何が言いたかったんだ……?





『でもお兄さん、すごく優しそうだし……
 死神なんて似合わないですよ?』










「死神なんて似合わない、か」


自分でも向いてない仕事だと、未だに思う。

見た目が、ってことじゃない。
自分の性格的に、向いてないんだ。


スクアーロのように、「仕事だから」と
割り切ることも出来ないしな……。










「……けど、オレはこの仕事をやめられない」


やめるわけには、いかないんだ――……
















「ったく、! ちょっと食べすぎよ?」

「だって、おいしいし」

「お腹壊しても知らないんだからねー」

「大丈夫だよ」










「…………」


の様子を見に来てみると、
学校帰りに友達とアイスを食べているようだった。





「俺は……」


オレはあと数日後に、あの子を狩るんだな。
いつものように、黒から護って……。






「本当に出来るのか……?」


……いや、出来る・出来ないじゃない。
やらなきゃならないんだ。

オレが狩らなきゃ、の魂は黒に取り込まれてしまう。
それは何としても阻止しなきゃならない。

でも……




「くそっ……」


どうしてオレは、直前になるといつも……










「私は大丈夫! だって……」

「だって、何?」


“もう少しでいなくなるから”






「……!」



“だから、今のうちに楽しまなきゃ……”





「秘密だよ」

「何それー」

「後で教えてあげるから」

「絶対よ!」

「うん」









「……なんで、」


なんでは、こんなに強いんだ……。





『お前の言う通り、お前はもうすぐ死ぬ』

『っ……』



怖いはずなのに。
死にたくないはずなのに。

どうしてこんなに、強くいられるんだ……?





「……ははっ」


オレの方がよっぽど怖がってるじゃねぇか。
別に初めての仕事でもないってのに……。










「……情けねぇな」


思えばは、最初から強かった。

事実を受け入れるまでは焦っていたけれど、
その後は普通に死神であるオレと話せている。





「オレも見習わねぇとな」


そしてオレは、友達と別れたの元へ降りた。















「よ、

「ディーノさん! こんにちは」

「……!」


な、なんだ……?





「どうかしました?」

「い、いやっ……別になんでも」

「それならいいんですけど……」


今、オレはどうしたんだ……?

に笑いかけられたら、何か……










「もしかして……様子を見に来てくれたんですか?」

「あ、ああ。そんなところだ」

「わざわざありがとうございます」

「……!」






『気のせいかどうかは、そのうち分かる』





再びの笑顔を見たオレの脳裏で、
先ほどのスクアーロの言葉が再生される。





「まさか……」


まさか、オレは――……










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