『「死神」がどんな存在なのか、もう少し知りたいんです』
「…………」
の言葉で妙に気になったオレは、
死神について古い文献を調べてみることにした。
『文献だと?』
『ああ。なんかいいの知らねぇか?』
『……だったらこれ読んでみろぉ』
そう言ったスクアーロは、持っていた本をオレに渡してくる。
『でも、これはお前が使うんだろ?』
『……俺はもう読み終わった。
それはお前に持ってきたんだぁ』
『オレに……?』
『せいぜい頑張れよ』
『あっ、おい……!』
オレの声を無視して、スクアーロはそのまま行ってしまった。
「……とりあえず読んでみるか」
優秀なスクアーロが読んでたものだし、
何かしら参考になるだろからな。
――死神。
それは、理由もなく魂を奪う存在だと
古くから地上では伝えられている。
しかし、本来「死神」というものは
そんな単純なものではない。
今から数千年前……
死神はまだ、一つの存在であった。
だが、いつからか派閥が生まれてしまった。
黒と白。
我々はそう呼んだ。
黒は己が欲のために力を使い、
強大な力を持つ魂を取り込まんとする死神。
白は、そんな黒から魂たちを守る死神。
とは言え、白も魂を「狩る」ことに変わりはない。
ある日、それをつらいと感じた白がいた。
今まで狩ってきた「強大な力を持つ魂」は、
一人の例外もなく皆、短命だった。
黒から護るために自分たちが狩ることで、
寿命が短くなっているのではないだろか……。
そう仮説を立てた白は、本来狩るべき「強大な力を持つ魂」の持ち主を、
なんとかして死なせない方法は無いかと考えた。
そう考えるに至った理由は簡単である。
その白は、対象の魂を持つその少女に……
恋をしていたからだ。
「……!」
対象の魂を持つ人間に……
「死神が、恋をしていた……」
その白は、必死になって少女を助ける方法を探した。
そして、一つの方法を見つけ出した。
その方法とは……
『それはお前に持ってきたんだぁ』
「……そういうことかよ、スクアーロ」
やっと分かった。
スクアーロから見て、オレがいつもより苦しそうだっていう理由も。
オレがいつもよりも悩んでいる理由も。
オレは……
「オレは……のことが好きなんだ……」
この文献には、本来ならば白が狩るべき魂を
死なせずに助け出す方法が書かれていた。
それを見つけたスクアーロは、わざわざオレに持ってきたんだ。
きっと、これは……
「オレに与えられた……新たな選択肢だ」
――を助けられるかもしれない。
彼女が好きだと自覚した今、
助けたいという気持ちは大きくなった。
「だけど、はもともと死ぬはずだった存在」
その代償は大きい……
「…………はぁ」
どうすっかな……。
「……ん?」
なんだ、この最後のページ……
真っ白で何も書いてねぇ。
「製本するときに間違ったのか?」
特に深い意味もなさそうだしな。
気にすることはないか。
「おーい、スクアーロ!」
「ん゛ん?」
「この文献、ありがとな!」
「……読み終わったのかぁ?」
文献を受け取ったスクアーロは、
いつになく真剣な表情で俺に聞いた。
「ああ」
「で、どうする気だ?」
「……まだ考え中なんだけどな」
「そうか……
ま、せいぜい後悔しないようにするんだなぁ」
そう言って、スクアーロは去っていった。
「……ああ、そうだな」
後悔だけは……しないようにするよ。
死神の訪れる刻。
狩るでのはなく、護るために訪れる――……
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