「ツナ、帰ろうよー!」

「うん!」


その日もいつものように、幼馴染のと一緒に下校する。





「それでね、そのときにね、」


彼女はすごく明るくてかわいい。

だけど、最近……
なんだかその明るさに、違和感があって。





「っと、もう家に着いちゃった。
 じゃあまた明日ね、ツナ!」

「……ねえ、?」

「ん?」





「最近ちょっと、元気ないよね。
 何かあった?」

「……!」


目に見えて元気がないってわけじゃない。
だけど、いつもと違うって言いきれる自信はあるんだ。










「……特に何もないよ!
 じゃあ、またね」


彼女はそう言って悲しそうに笑い、自分の家に入っていった。





……」


その夜だった。

オレが、妙な夢を見たのは――……















『ん……?』


あれは……





……!』

『おはよう、ツナ!』

『う、うん……おはよう』


誰か……助けて……





『……えっ?』


今のは……彼女の声……?










『どうかした?』

『いや、えっと……』


彼女は、オレの目の前にいるのに……

さっきの声は、すごく遠くから聴こえた気がする。










『……、オレちょっと用があるから行くね』

『うん、またね!』



誰か……



声ガ



助けて……お願い……



声ガ聴コエル



私は此処にいるよ……



助ケヲ求メル声ガ





『一体どこから……』





助けて……!










『……!』


あそこからだ!





『水溜り……?』


誰か……助けて……!





『……もしかして、これは』


ヒトの……彼女の心……?





『見た目は普通の水溜りだ、だけど……』


もしこれが、彼女の心だとしたら……





『見た目ほど、浅いものじゃないかもしれない』


さっきはごまかされちゃったけど……

彼女は今、何かに悩んでいるはずなんだ。





『心の深さなんて、誰にも分からないし』


お願い……誰か……





『…………』


この声に呼ばれたのはオレかもしれない、
オレじゃないのかもしれない。

だけど、きっと……問題は別にあるんだ。





『……よし』


一呼吸おいてから……

その水溜りに、オレは勢いよく飛び込んだ。










『やっぱりすごく深そうだ』


この深い心の底まで、息は持つだろうか。





、待ってて……』


君が自ら沈めた君自身を、必ず見つけ出す。

見つけるまで、オレはもぐり続けるから。





『っ……』


さすがに苦しくなってきたけど……

それと比例して、彼女に近づけてるはずなんだ。





『……そうだ、』


再び呼吸をするときは





……君と一緒に……!』



















「何かあった?」


別れ際、ツナはそんなことを言った。

だけど、私は……
何も話さず、ただごまかして逃げたのだ。





「……でも、そっか」


やっぱりツナにはバレちゃうか。

昔からそうだったもんね。
私が悩んでること、すぐに見抜いちゃってさ。





「だけど……元気がないのは、ツナも同じでしょう?」


その夜だったの。

私が、妙な夢を見たのは――……
















『……、オレちょっと用があるから行くね』

『うん、またね!』


夢の中でツナと話していると、
ふいに何か考え込むそぶりを見せた。

かと思いきや、真剣な顔をして。
何か用事があるからと言うから、そこで別れる。




『でも、やけに深刻そうな顔をしてた……
 ちょっと追いかけてみようかな』



誰か……





『……えっ?』




声ガ




助けて……



声が聴コエル



オレは此処にいるんだ……



助ケヲ求メル声ガ





『一体どこから……』





助けて……!










『……!』


あそこからだ!





『水溜り……?』



誰か……助けて……!





『もしかすると、これは……』


ヒトの……ツナの心……?





『見た目は普通の水溜まり、なんだけど……』


もしこれが、ツナの心だとしたら……





『そんなに浅いはずないよね』


私がごまかして会話を終わらせちゃったから、
聞けなかったけれど。

ツナも今、何かに悩んでいるんだと思う。





『心の深さなんて、誰にも分からないから』


お願い……誰か……





『…………』


この声が求めているのは私かもしれない、
私じゃないのかもしれない。





『だけど、きっと……』


一呼吸おいてから……

その水溜まりに、私は勢いよく飛び込んだ。






















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