任務から戻って早々、10代目から呼び出された。

きっと、また新しい任務を任せて頂けるんだろう。

そんなことを考えていたオレの期待を、
10代目は見事に裏切った。





「嘘だ……」


オレは10代目のその言葉を、
出来れば聞き間違いで済ませたかった。





「残念だけど……本当のことなんだ」


だが、それは聞き間違いなどではなく。

一瞬10代目の冗談かとも思ったが……
そんなタチの悪い冗談を仰る方ではない。





「彼女は……は、死んだんだ」


頭が真っ白になったオレは、何も考えられなくなってしまった。














――あいつが死んだと聞かされてから、数日が経った。

何も考えられなくなって放心していたが、
徐々に落ち着いてきた頃、そのいきさつを話して頂いた。





が5日前からあたっていた任務なんだけど……
 彼女の実力なら、もう帰ってきてもいい頃だったんだ』


だが、あいつは帰っては来なかった。

確かに少し面倒な任務だが、
そこまで難しい内容でもなかったらしい。

それなのに、帰ってくる気配すら見せなかった。





『さすがにオレも、少し心配になって……』


そして、あいつが任務のために向かった場所へと
偵察隊を出したんだそうだ。





『偵察隊の話によると、そこにが倒れていたって……』


その時点でもう、息は無かったという。











「くそっ……」


オレは、あいつを……守れなかったのか……



 オレが絶対にお前を守る。
 だから、俺と一緒にイタリアに来てくれ。











もマフィアの家の生まれで、実力もあった。

10代目とより良いボンゴレを作っていくためにも、
そして、オレ個人としても……

あいつにはボンゴレに入ってほしかった。

オレはあいつを……愛していたから。





『一緒に……来てくれるか?』


一緒にいたかった、本当はただそれだけだった。





『本格的にマフィアとして活動するとなれば、
 今まで以上に危険も付きまとう』

だから、オレはあいつに誓った。





『オレが絶対にお前を守る。
 だから、俺と一緒にイタリアに来てくれ』


あいつは迷う素振りなど一切見せず……
オレの大好きな笑顔で頷いてくれた。





『これからもよろしくね、隼人』


その言葉が、どれほど嬉しかったか……
オレは今でも覚えている。

本当に嬉しくて……

ご迷惑かとも思ったが、
勢いのまま10代目にご報告したくらいだ。





『良かったね、獄寺くん』


10代目もご自分のことのように、喜んでくださってたな……。









『行こう、隼人。
 あたしたちの新しい場所へ!』

そう言ってお前が微笑んでいたのが、
まるで昨日の出来事のように……鮮明に思い出される。


危険が付きまとは言っても、
それでもオレたちなりに幸せになれると思っていた。











「だが……それももう、叶わない……」


あいつは……
は、オレの世界からいなくなってしまったのだから――……















「あ、獄寺くん」

「10代目……どうかされましたか?」

「うん、次の任務なんだけど……
 お願いできるかな?」

「任務……」


この世界からは消えた。

だが、それでも世界は廻り続けるんだと……
改めて突き付けられた気がした。





「……やっぱりやめておこうか?」

「いえ……やらせて下さい」


10代目にこれ以上心配を掛けるわけにはいかないし、
気遣ってもらうなんて、オレには勿体ないことだった。





「すぐに出発してほしいんだ」

「分かりました。
 けどその前に、少し寄りたい所があるんです」

「うん、いいよ。それで、何処に寄るの?」





の墓です」















あいつが好んでよく来ていた、小高い丘にその墓はある。
墓を作るという話になったとき、オレは迷わずここを推した。





『オレはここで待ってるね』


手前で待っているという10代目のお言葉に甘えて、
オレは一人、の墓の前まで来ていた。





……」


言いたいことはたくさんある。
出来ることなら、お前に直接会って謝りたい、けど……





「……任務ほったらかしにしたら、お前だって怒るだろ?」


だから、行ってくる。
お前はここで、待っててくれ……





「…………、」


出来ることなら、もう一度お前に会いたい……

もう一度お前に触れて……お前を、抱きしめたい……





「っ……くそっ……」


どうして、今さら涙が……










「隙を見せたな、ボンゴレ10代目・ファミリーの獄寺隼人!!」

「……!」


刺客か!?
油断してた……!





「くそっ……!」


今から避けるにしては間に合わねぇ……
けど、なんとか致命傷だけでも避けねぇと……!

そう思ったオレが振り返ったのと、
襲ってきたと思われる男が倒れたのは、ほぼ同時だった。





「ったく……ほんっと、肝心なときにダメなんだから」

「っ……」


そして聞こえてきた、その声は……

まさか……





……?」


倒れた男の、さらにその先に。
呆れた顔で立っていたのは、他でもない……

会いたくて仕方がなかった、だった。





「なに呆けた顔してんの? 
 もうちょっとで死ぬところだったのよ」


油断したことちゃんと反省して、あたしに謝るの!





「え、あ、お前……」

「いいから、ほら!」

「あ……悪りぃ……」


何がどうなってんだよ……
なんで、死んだはずのこいつが……










「お前、本当に……、なのか……?」


オレの目の前にいるこいつは……幻じゃねぇのか……?





「そう、あたしはだよ。
 本当に、なの」

「っ……なんで、だよ……」


なんで……生きてんだよ……










「獄寺くん、ごめん!
 それはオレから説明するね」

「10代目……?」


全く状況が分からないオレは……

いつの間にかそばにいた10代目のお言葉に、
耳を傾けるしかなかった。








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