ちゃん、おはよう」

「おはよう、ツナ」


教室に入ってきたツナが、
いつものように挨拶をしてくれた。





「おはようございます、10代目!!」

「お、おはよう獄寺くん」

「よーっス、ツナ」

「山本も、おはよう」


次いで、獄寺や山本もやって来た。
どうやら今日は、一緒には登校しなかったらしい。





も、よっス」

「おはよ、山本」


私は、いわゆるフリーのマフィアだ。
その関係で、この三人ともよく話すようになった。

まあ、山本は未だに
マフィアごっこだと思ってるみたいなんだけど……。





「おいコラてめぇ、10代目に軽々しくするんじゃねぇ!
 もっと尊敬の意を込めて挨拶しやがれ!」

「ちょっ……そんなの別にいいよ、獄寺くん」

「ハハハ、やっぱ面白れーな獄寺は」


三人は、ボンゴレファミリーの一員なんだよね。





「ファミリー、か……」


ファミリーが居るって、どんな感じなんだろう……










「ボンゴレに入ってみるか?」

「……!」


突如聞こえた声に、私は身構える。
振り返ると、そこにはリボーンが立っていた。


以前、仕事の関係で知り合ったんだけど……

ツナの家庭教師になるため来日したリボーンと、
ここ並盛で再会したのだった。





「お前なら実力もあるし、オレは大歓迎だぞ」

「で、でも……」


私なんかがいたら、きっと足手まといになる。





「誘ってくれたのは嬉しいけど……」


ボンゴレには入らないよ。





「お前がいると、オレも楽しいんだけどな」

「ありがと、リボーン」


リボーンなら変なお世辞は言わないはずだから、
私の実力を認めてくれているのは本当だろう。

それは素直に嬉しかったから、できるだけ笑顔で返した。










「これで果てろ、野球バカ!!」

「おっと、」










「そういや、
 昨日の休みに出掛けたんだってな」

「あ、そうだった。
 リボーンにもお土産があって……」


そう言いかけたところで、私は何かの気配を感じ取った。

見ると、獄寺が放ったらしいダイナマイトが、
真っすぐこちらに向かってきている。










ちゃん、危ない……!!」

「やべっ……! 避けろ、!!」





「…………」


大丈夫……
このくらいなら私にも……!

そう思って、迎え撃つ態勢を取ったとき。










……!!」

「……!」


いつの間にかこちらにやって来ていた獄寺が、
突然私の前に飛び出してきて、そして……

そのまま、自らが放ったダイナマイトを受けてしまった。










「っ……」

「獄寺……!」


やはり直撃していたようで、獄寺は膝をついてしまう。
私は慌てて、そばに寄った。





「獄寺……!」

「……大丈夫だったか?」

「なんで、……」


なんで私のこと、かばったの?





「あんな風に突っ込んできたら、
 いくら獄寺でも死んじゃうじゃない!」

「自分の武器で死ぬアホがどこにいんだよ」

「でも、直撃してた……!」

「オレは平気だっつーの」


そう言って、獄寺は私の頭をぽんぽんと軽くたたく。










「それより、お前を危ない目に遭わせちまって悪かったな」

「それは……もう、いいよ。
 でも、獄寺も無茶しないで」


かばったことについて問い詰めても、
これ以上は何も言わないだろう。

それが分かったから、
私は本当に伝えたかったことを口にした。





「ああ、分かってる。
 10代目の右腕は、オレしかいねぇからな!」

「うん……」


獄寺はいつも、私のことを守ってくれていて……
こうやって無茶をすることも少なくない。

本人は平気そうにしているけれど、
こんなことばかり繰り返していたら……。





「…………」


その「10代目の右腕になる」という目標の、
邪魔になってしまう気がする。

私の存在が、獄寺の邪魔を……










「今のは、自分でも対処できたんじゃねぇか?」

「……!」


考え込んでいた私にそう言ったのは、
これまたいつの間にかそばに居たリボーンだ。





「図星って顔してるぞ」

「うん……今のは自分でも何とか出来たと思う」


獄寺に助けてもらわなくても……
たぶん平気だったと思うんだ。





「でも……今の私じゃ、ダメなんだろうな」


私じゃ避けきれないと思ったから、
獄寺は助けに入ったのだろう。


現状では、まだまだ力不足……

そんな私がファミリーに入ったら、
獄寺の目標を邪魔してしまう気がする。





「まぁ確かにまだ修行は必要だが……
 素質はあると思ってるんだけどな」

「そう、かな」


リボーンに言われると、少しだけ自信が持てるかも。
でも、それでも私は……










「ボンゴレがダメなら、キャバッローネに入ってみたらどうだ?」

「キャバッローネ……?」


跳ね馬――ディーノさんのところか。





「あそこなら部下もたくさんいるしな」


お前のサポートをしてくれるやつも居るし、
ディーノもボスとしてお前をちゃんと育てるだろ。





「自分の実力にまだ不安があるお前でも、
 居心地としては悪くねぇと思うぞ」

「うん……確かにそうだね」

「ファミリーの仲間がいるってのはいいからな」

「仲間……」


……そっか。
私は「仲間」に憧れていたのかな。

それが分かったから、
リボーンはボンゴレに誘ってくれたのかも。





「…………」


ボンゴレには入れないけど、キャバッローネなら……。











「ねえ、リボーン。
 ディーノさんと連絡とれるかな?」

「……本気なのか?」

「うん……確かに私は、『仲間』に憧れているし」


今の私に合ってるファミリーみたいだしね。





「キャバッローネに入ったら、
 獄寺に会える機会も少なくなるぞ?」

「……分かってる」

それくらい、分かってる。

だから……だからキャバッローネに入るんだ。
もう、獄寺に無茶をさせないためにも。










「連絡は不要だぞ」

「え?」


どういうこと……?





「実は、ディーノからお前に声が掛かってたんだ。
 オレから伝えてやるって約束しててな」


リボーンから話を受けた私が誘いを受けたら、
次の日曜に空港で待ち合わせる手はずになっていたらしい。


急にキャバッローネなんて言うから、
ちょっと不思議に思ったけど……

なるほど、もう準備万端だったんだ。





「伝えてくれてありがとね、リボーン」

「本当にいいのか?」

「うん……これでいいの」


君の目標の邪魔になるくらいなら、私は……



君の元を離れます。
本当は、ずっとそばに居たいトオモウくらい、大好きだけど……

それでも、私は――……










NEXT