「着きましたぜ、さん」

          「えっ……ここ、なの?」


          総悟くんが指さしたのは、なんだかすごく高級そうなホテルだった。

          ……確か、神楽ちゃんとふたりで「面白い場所」だって言ってたけど、本当にここなのかな。







          「ここで合ってるヨ、
           ほら、さっさと行くアル!!」


          あたしの心の声に答えるように、神楽ちゃんがそう言って手を引いてくれる。

          後ろからついてくる形になっている総悟くんも特に何も言わないから、
          目的地は本当にこのホテルで合ってるみたいだ……。















          「この奥でさァ」


          エレベーターに乗って上がってきた階で降りると、
          右手の通路のほうを総悟くんが示した。







          「じゃあさっそく……
           ……ん?」


          歩き出そうとした総悟くんが、ふいにその足を止める。







          「どうしたの、総悟くん」

          「いや、それが……
           ロビーで預けてたものを、受け取ってくるのを忘れちまったんでさァ」


          その「預けてたもの」というのは、どうやらこの後に使うものらしく
          取りに戻ります、と、総悟くんは再びエレベーターに乗り込み……










          「待てヨ!
           お前だけじゃ不安だから、私も一緒に行ってやるネ!」


          続いて神楽ちゃんも、そのエレベーターに乗り込んでしまう。







          「あの、ふたりとも…」

          「大丈夫アル、
           この先の部屋に居る奴らが、案内してくれるネ!」

          「さんは先に向かっててくだせェ」


          あたしが何か言い返す間もなく、さっさと閉じられてしまったエレベーターの扉。















          「……はあ」


          なんか色々と気になったけれど……

          ずっと立ち尽くしていても仕方がないので、
          とにかく言われた通り奥の部屋へと向かうことにした。






























          「ここかな?」


          言われた部屋をのぞいてみると……

          鏡がたくさん並びその前には椅子が設置してあって、
          どうやらメイク室?みたいなところらしかった。


          そしてそこでホテルのスタッフらしき女性数人が何かを準備していたんだけれど、
          そのうちの一人がこちらに気づく。







          「あっ、あの…!」


          まずい、と思ったんだけれど、そのスタッフはパッと笑顔になって言う。










          「様でいらっしゃいますか?」

          「え? あ、はい、そうですが…」


          どうして、あたしの名前……。

          その疑問に答えるように、スタッフさんは続ける。










          「お待ちしておりました。
           お連れ様からこちらにてお支度をお済ませ頂きますように、とのお話ですので」

          「は、はあ……」


          お連れ様?
          神楽ちゃんと、総悟くんのこと…?

          何が何だか解らないままだったけれど、
          とりあえずあたしはスタッフさん方の指示に従って
         (何故か)ドレスみたいな服に着替えたり化粧したりといろいろ済ませていった。





















          「それでは様、こちらの扉からお入りくださいませ」

          「は、はい」


          それだけを言い残し、スタッフさん方は立ち去ってしまう。







          「なんだろう……」


          未だに何が何だか状態なんだけど、とにかく…
          この扉を開けてみれば、全て解るよね。

          そうして意を決したあたしは、扉に手をかける。

          ……すると。




















          「「「「「「「「「「お誕生日おめでとう!!!!!!」」」」」」」」」」


          パーン! という音を立てながら、
          数えきれないくらいのクラッカーが飛び交った。











          「これって、……」

          「んなもん決まってんだろーが、お前の誕生パーティだよ」


          一体どうして、と、言おうとしたあたしに、
          言葉を遮るようにして言い返したのは銀さんだった。







          「銀さん……みんなも…………」


          銀さん、新八くん、お妙さん、に土方さん、近藤さん、真選組のみんな…
          よく見れば、さっき忘れ物?を取りに戻った神楽ちゃんや総悟くんも既に居る。

          それ以外にも、今まで会ったことのある人など、スーツ姿の人がたくさん集まっていた。















          「万事屋から、ちゃんの誕生パーティをしたいって相談されてな」

          「その後ずっと、みんなで準備してたんですよ」


          未だわけが解らない状態のあたしに、近藤さんと新八くんが言う。







          「話し合いしてるときは、グダグダだったけどな……
           なんとかまとまってはいるだろ?」


          苦笑しながらそう言ったのは、土方さんだ。







          「私たちは、にバレないようにする役だったアル!」

          「つまりさんを引きつけといた、ってわけでさァ」


          神楽ちゃんと総悟くんは、悪戯が成功したみたいな顔をしていた。















          「そう、だったんですか……」


          どうしよう…すごく嬉しい……。

          そう思う一方で、ひとつだけ謎のままなことがあった。







          「でも……この格好は一体…?」










          「だってお姉、好きでしょ? スーツ姿」


          あたしのつぶやきに答えたのは、他でもない。
          不敵な笑みを携えた、だった。





          「……うん!!」


          確かにスーツ姿が好きっていうのもあったんだけど……
          それだけじゃない。

          なんだか色々と嬉しくなってしまって、あたしは満面の笑みで返した。















          「じゃ、改めて。
           パーティを開始するよ」

          「「「「「「「「「「おおォォォーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」」」」


          の声に合わせ、会場中から一斉に声が上がった。



































          ――そして、数時間後。

          あれからみんなでご飯を食べたり、おしゃべりしたり……

          こんなに大人数で何かをしたことがなかったあたしは、
          本当に楽しくて充実した時間を過ごしていた。







          「のどが渇いたなぁ……」


          何かないかな、と思って辺りを見回していると。







          「、これ飲むといいネ」

          「わあ、ありがとう神楽ちゃん。
           これどんなジュース?」

          「わかんないけど、そこにあったヨ。
           おいしそうだから、にあげるアル!」


          確かに、ピンク色でかわいくておいしそうだ。
          さくらんぼが浮いててオシャレだし…。










          「じゃあ、いただきます」

          「どーぞアル!」


          あ、これ炭酸じゃないんだ…
          うん、すごく飲みやすいか、も……















          「…………」

          「? どーしたネ?」

          「…………」

          「あっ、、どこ行くアル!?」












































          「そうごくん……」

          「さん?
           どうしたんでさァ、そんな千鳥足で……」


          
がばっ!!







          
「!?!?」

          「そうごくん、あたし、ねむくなってきちゃったぁ……
           いっしょにねよ?」

          「え、ちょっ……さん!?


          ……ん?
          あれはお姉…総悟にひっついて何やってんだ?

          がそう考えている間に、慌てた神楽が二人のそばに駆け寄ってくる。















          「、何やってるカ!
           
そんなやつに触ってたらSがうつるヨ!!

          「オイ チャイナ、Sは病原体じゃねーぜ

          「うるさいヨ!
           そんなことよりをさっさと離すアル!」

          「お、俺だってそうしたいのは山々だが、さんが……」





          「そうごくん……だめ??」

          「え、いや、そのっ……
           、さん…
勘弁してくだせェ!!


          それだけ言い残した総悟は、らしくない動揺っぷりを見せて一目散に逃げ出してしまった。















          「ったく、ホント打たれ弱いな、総悟の奴は」

          「
           なんかが変なんだヨ!」


          様子を見るため近づいたに、神楽が助けを求めてくる。







          「変ってゆーか…酔ってるんだろ?
           お姉は、酒はあんま飲まないはずなんだけどな……」


          そうつぶやくと、神楽に何か思い当たることがあったのか……
          しまった、というような顔をした。







          「もしかして、さっきのジュース……」

          「ジュース?」

          「あそこに置いてあったピンクのジュースアル!
           がのど渇いたって言ってたから、渡したんだヨ」


          ……うん、それだ。
          
間違いなく原因はそれだ。

          は確信した。















          「オイ何騒いでんだオメーら、せっかくののためのパーティを……」


          そんなことを言いながら近づいてくる銀時。
          だが、銀時が言い終わる前に、誰かがものすごいスピードで奴に抱きついた。







          
「!?!?!?」

          「ぎんさん……あたし、ねむくなっちゃったから、そうごくんにいっしょにねよ?っていったの。
           でも、なぜかおいてかれちゃって……」


          銀時に抱きついた誰か、というのは、言わずもがな酔っ払いお姉だ。
          一方の抱きつかれたほうの銀時は、総悟と同じくかなり動揺している。










          「ぎんさんなら…いっしょに、ねてくれるよね?」

          「え!? いやァ、それは、だなァ……」

          「だめ、なの……?」

          「うっ…いや、その、あの……
           あ、
許してくれ!!!


          そう言い残した銀時は、総悟と同じくかなりの動揺っぷりを披露して逃げ出してしまった。















          「マジでドSコンビ打たれ弱すぎだろ」


          とにかくこれ以上お姉に暴れられても(?)困るので、どうにかしないと…。

          そうして思考を巡らせようとしたとき、横から声が掛かった。










          →「オイ何やってんだ、

          →、きょっ、今日はとりあえずパーティ終了な!?」